前巻に続いて、読む前の巻頭イラストの珍改装戦艦「金剛」に涙してしまう、という状態。本文を読み始めるまで2-3日かかりました。
戦略設定自体は、この作者らしく上手いです。今巻は空母決戦が主体になりますが、マリアナを盾にして米起動部隊に消耗を強いる。
ただし、これは「台湾沖決戦―鋼鉄の海嘯」の二番煎じの感を否めません。
いくらなんでも、と思ったのが、珍改装戦艦「金剛」。いくら昭和19年が舞台とはいえ、完成済みの戦艦のバーベッドを撤去して、
最上型巡洋艦の15.5cm三連装砲塔を積めるだけ積む、というのが日本で可能かどうか。前巻「ドゥリットル強襲」や、「碧海の
玉座4巻」で防御の不備をレビュー指摘したら、「弾薬庫の配置には細心の注意が払われたが云々」、と注意書きが。
そこは百歩譲るとしても、砲郭装備の副砲まで同一の単装砲にしている。これはあり得ません。本来、日本の近代戦艦は、15cm砲の
人力装填が体力的に困難で、14cmに設計変更された経緯があります。15.5cm砲弾は更に重いので、スペースに余裕のない砲郭では
機力装填は無理です。
どうせハッチャケてしまうなら、砲郭に限定旋回式の装甲付き四連装61サンチ魚雷発射管を装備し、近距離同航砲戦(砲戦距離を
固定する)中に、片舷二八射線(!!)の無雷跡酸素魚雷の飽和攻撃で大混乱させてから水雷戦隊突撃、くらいやってほしかった。
また、VT信管が無効化されるのは納得ですが、この時期には既にベテランパイロットが底をつき、「マリアナの七面鳥撃ち」状態
になっていたはず。防御持久戦のため要員重視、というなら判りますが、トラブルを起こさない誉・熱田エンジンや、「二観気球」が
「徹甲弾」で炎上(曳航弾?)するとか、貴重な目視観惻員の消耗を多少でも避けるため、バラスト緊急投棄と係留ワイヤ切断で急速
上昇しつつ落下傘降下、という風景もない。どうもチグハグです。
極めつけは、日本は世界に先駆けて超長波通信を1941年には実用していたのに、記述がないこと。1944年が舞台なら、重要拠点基地間
や、潜水艦への指示符丁なら夜間通信は可能なはずです、と書いたら、次巻あたりでは登場したりして・・・?
八八艦隊シリーズ以降、「敗北主義者」のレッテルがトラウマになったのか、「巡戦・浅間」シリーズ以降では痛快に日本を勝たせる
のに腐心しているようにも見える筆者ですが、このシリーズは少し酷すぎます。なまじ「萌え萌え女子司令官戦記モノ」と違った一定
のリアリティはありますから、逆に、初心者ファンを惑わしかねない。次巻でどう収拾するか、ネタをまた提供してくれるか、という
あたりに期待して、皮肉の意味で星一つにはしないでおきますが。
台湾沖決戦―鋼鉄の海嘯 (C・NOVELS)擾乱の海〈3〉ドゥリットル強襲 (歴史群像新書)碧海の玉座〈4〉ソロモンの覇者 (C・NOVELS)