あまりにこの本が「いい」という人間が多いので、フォトエッセーとして楽しませていただいた。なるほど、例えば田中長徳氏の著作などをはじめとする今までのライカ本に比べれば、若干撮る行為に寄っている内容で新鮮ではあった。
しかし実用的にライカを使いこなすという視点では、いささか偏見に満ち(エッセーなのだからそれでいいのだが)、本書に影響を受けた層がこぞって購入したためにズミルックスやテレエルマーの人気が出て高騰したようにも思えてくる。
筆者はライカを使用するプロは少ないという。報道畑だというから別なのかもしれないが、実際の職業カメラマンは昔から結構M型を使用しており、M8.2やM9が出てからさらに増加している印象がある。特に雑誌系や人物の取材、グラビアなどで。機材で目立ちたくない場合、撮影を主張したくない場合にM型は好まれる。コンデジやミラーレス一眼で仕事はできないが、M型であればできるからだ。
プロは、ましてやドキュメンタリー寄りの仕事であれば、通常はカメラの見てくれなど気にせず最新機種を使い、レンズは有無を言わず失敗無く高画質を残せるASPHを選ぶ。8枚玉だアンギュロンだロック付きのズミルックスだなどというのは、仕事上使い物にならない。写真作家なら別だが。実務上の話で恐縮だが機材は減価償却するため、M4ブラックペイントという選択はまずありえず、新品で買える機種が中心になる。また筆者が酷評するM6を使用するプロは現代でもかなり多い。
結論として、筆者はアンチライカマニアと自ら称していますが、筆者は筆者が揶揄する「ライカマニア」と50歩100歩のライカマニアに相違ないでしょう。その証拠に筆者が愛用して数々の現場を撮影してきたというM4ブラックペイントはハゲの無い綺麗な状態であるし(※通常ブラックペイントは本気で使えば三ヶ月でハゲて地が見えてくる)、レンズの描写の説明を見ても同業者視点からすればマニアよりの誤解&陶酔&思い込みが見られる。何より実用に適さない大口径レンズばかりを好む姿勢は、スペック大好きなマニアの証明のようなもの。
また『撮るライカ2』では本書で揶揄していた新MPを性懲りも無く購入して耽美喝采しているから、ほほえましい。
色々書いたが筆者の主張でもある「カメラは使ってナンぼ」という意見には賛同するし、せっかくライカを買われた方、興味を持っている方がライカを使いこなす一助になればいいのではないかと思う。ただこの内容が世の中のプロのM型への接し方かというとそうではないということ。
新刊ハードカバー2400円ではなく、古書で500円なら読む価値があると思う。