企業研究・軍事研究を重ねて過去の歴史に学ぶ,という趣旨に基づいています。
いるのですが…
軍事研究の充実ぶりに引き換え,企業研究面の内容の薄さに落胆すら覚える,
という構成になっています。
軍事研究は
日米開戦・日露戦争・信長の金ケ崎・盧溝橋・ドイツ電撃戦・キスカをケーススタディにします。
防衛大教授だけのことはあり,研究は最新かつ非常に納得性の高いものです。
冒頭からいきなり
満州建国に至る満州事変と盧溝橋に端を発する支那事変の経緯は全く異なることが
語られ
大東亜戦争に関して巷間良く言われる,
‘防衛のための戦争だった’‘やむを得ず開戦に追い込まれた’といった
ステレオタイプの理屈などは消し飛びます。
失敗に至る過程・当事者の立場・判断を明らかにしながら
個々の撤退がいかに優れた/間違った決断であったかを
自明になるまで掘り下げて分析します。
乃木希典大将の評価にも溜飲が下がります。
後から彼を評価するものの立場を一つひとつ明らかにしたうえで
後知恵の利は‘戦史研究の陥穽’であると断ぜられ
胸の空く思いがします。
残念ながら,この陥穽に見事に陥っているのが企業編です。
多くは述べませんが各企業ごとの撤退の事実とその後の経過を
財務諸表や年表から紹介します。
撤退の‘本質’については例えば,経営的な決断には
‘強烈なエネルギーが必要だと思います’
といった具合に推論が述べられます。 一事が万事このような調子です。
思うに
編集者こそが,このような落差をまとめきってほしかったものです。
軍事編が一流の研究書であるだけにこの落差が惜しまれてなりません。
企業編の著者には是非再起を願いたいものです。
全般にみて
中堅のビジネス書読者には全く物足りない内容ですが
軍事編の充実ぶりは手練の戦史マニアも満足できる内容になっています。
という訳で
戦史に詳しい方でかつ,まだ余り企業に詳しくない
就職活動中の学生諸氏や新入社員に(だけに)おススメの一冊です。