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摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫)
 
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摘録 断腸亭日乗〈下〉 (岩波文庫) [文庫]

永井 荷風 , 磯田 光一
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 903 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

読む者を捕えてはなさぬ荷風日記の魅力を「あとを引く」面白さとでもいおうか。そういう日記の、ではどのあたりが最も精彩に富むかといえば、その1つとして戦中の記事をあげねばなるまい。なかでも昭和20年3月10日の東京大空襲にはじまる5カ月間の罹災記事は圧巻である。昭和12~34年を収録。

登録情報

  • 文庫: 426ページ
  • 出版社: 岩波書店 (1987/8/17)
  • ISBN-10: 4003104218
  • ISBN-13: 978-4003104217
  • 発売日: 1987/8/17
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 2.2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (4件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫|Amazonが確認した購入
戦中の暗い時世のなかで荷風の反軍国・反官の舌鋒は凄みを増して冴えわたり、挿入される街のうわさや風聞録のたぐいがコメディ・リリーフ的な役割を担い、当世女性流行の服飾や髪型のヘタウマ風スケッチに荷風の視力の確かさが見てとれる。
内容的には昭和16年のものがおもしろい。最晩年の荷風はほぼ毎日浅草銀座へ通い続けるが、その行動は八十歳間近の老人とは思えない。ただ、興味関心は薄らいでいくばかりで生活がハンで押したように固定化単純化されていき、内容も無味乾燥となる。
最後の年(昭和34年)の日記が無常である。突如体調を壊し、以後、病臥の日々が続く2ヶ月間に日記は次第に短くなり、とうとう月日と天候のみが記されていく。「四月二十九日 祭日 陰」。
さながら、ロウソクのともし火がふっと消えていくその瞬間に立ち会ったような感慨深い余韻があとに残る。
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By cobo
形式:文庫
永井の大正6年(1917年)から昭和34年(1958年)までの日記です。最初の頃は恐らく、誰にも見せるつもりは無く書かれているように感じました。後半は誰かに読まれる可能性を感じつつ(軍部による調査を気にしていたようです)、朱を入れていたのですが、ある事からその行動を恥じ、感じたことを(軍部批判であったとしても)そのまま、後に読まれることも想定しつつ書き綴っています。正直、頑固ともいえますし、柔軟性に欠ける部分ももちろんあります、そして少し一方的に過ぎるきらいはあるにせよ、芯の通った人の姿とも言えます。

人嫌いかのような荷風の、それでも交友関係の中でもやはり重きを置くのは先輩の森鴎外であり、後輩の谷崎潤一郎や堀口大學なんですが、その鴎外先生が亡くなられるのが大正11年ですから、この日記が始まって僅か6年、しかし非常に尊敬していたことが窺えます。以来、年に1度くらいの頻度で墓参りをしていますし、空襲の後に移された三鷹まで花を手向けに来ていたりします。

かなり病弱な人であったらしく、病臥していることも多く、そしてやはり銀座のカッフェーにも毎日のように出向いています。独身貴族のように振る舞いながら、しかし何処か女を求めることにひどく執着もし、遺産を分け与えるなら、死水を取らすならこの女だ、と感じて興信所に調べさせたりするところも、独善的で都合の良い解釈も多いのですが、しかし余計にドライなだけでない部分を垣間見せてくれて面白いです。

女性関係も、かなり事細かにその関係を吐露してくれていますし、特にお歌という女性にはかなり入れ込んだ挙句、病気になって余命1年と宣告され、しかしそれでも何とか関係を持ち続けたいという非常に情に流されている荷風を垣間見ることが出来ます。やれ女が家庭にいるのは文学の邪魔だ、とは言いつつ肉体関係にだけは40を越えても止められないものである、なんてことをしれっと告白されるとなんだか考えさせられます。しかし結局そのお歌にも関係を切られて非常に女々しく落ち込んでいるところも、同じように書き込まれています。

また、蛇蝎の如く嫌いな菊池寛の逸話が非常に面白く、さすが文藝春秋社をつくり直木賞や芥川賞をニッパチと呼ばれる景気の悪くなる時期のテコ入れ目当てで文学賞を設立した、と思わせる、ある意味大衆迎合的な上手さを理解させてくれます。銀座のカッフェー『タイガ』での、女給の人気投票にその店のビール瓶を1票にしたコンテストでは自分の贔屓の女給を勝たせるためにビール瓶105本を買い与えて持っていく話しなど、たしかに、という話しです。もちろんかなり感情的になっているようにも見えますけれど。しかし今も昔も同じようなことで男は金使ってるんですね。

嫌いな物の多い人ですね、年賀状ひとつとっても意味が無かったり誇大であるものには容赦ない批判が浴びせられます。また、お墓に花を手向けるにも、そこに肩書きや氏名が入っていたりすると売名行為のように感じ取って不快感を示したり、漱石の妻が漱石が妻にだけ残した話しを文章で発表しては、不貞だと嘆きます。荷風にとって世界は不条理で、その場しのぎで、野暮に見えていたのであろうと思います。日本人、というものを全然信用出来なかった、その荷風の印象は、私にも分かる様な気がします。

満州事変から太平洋戦争に至り、その末期の東京大空襲によって住処である『偏奇館』を焼き出され、蔵書すべてを失い、住むべき場所を失くし、数少ない友人である永井夫妻を頼り、中野、そして西日本の明石、最後は岡山にまでたどり着くその様が描かれる部分は急に文章が長く、そして生き物の様に動き回り、あの荷風の文体であって尚且つ臨場感を沸き立たせるのが素晴らしいです。焼け出されてから敗戦の報を知るまでの部分の日記は繊細であり、またあの荷風が心細く過程を描き出したものであり、そして被災するというルポタージュでもあって読ませます。苦労に苦労を重ねて何とか岡山まで逃げるまでの永井夫婦との、着の身着のままで放り出された心情を映し出しています。また、だからこそ、岡山で出会う谷崎夫妻に今までに無く暖かい目を向けています。よほど心細かったのではないか、と。

その後よくしてくれた友人とのトラブルから絶縁に到るまでの導火線の短さも、また荷風の特徴なのかもしれません。そして荷風は何かにつけ自分を律する道徳やら理性やら教養のレベルをどうも相手にまで押し付けようとしているように感じました。それでは皆に煙たがわれたでしょうね・・・

時に時事評のごとく添えられる目は、非常に冷静ですし、全てにおいて簡潔です。荷風にとっての事象についての感想は、言葉は少ないものの、簡潔にして人柄まで滲ませ、非常に面白いです。また、それにも増して日々の荷風の周りで起こる日常的出来事への感想が読ませます。軍部に対しての冷静な批判の的確さと、近所の知的障害児や社会的弱者に対しての憐みも、同列に扱われているのです。

1945年9月28日に差し込まれている『余は別に世のいはゆる愛国者といふ者にもあらず、また英米崇拝者にもあらず。惟虐げられる者を見て悲しむものなり。強者を抑へ弱者を救けたき心を禁ずること能ざるものたるに過ぎざるのみ。』はまさに荷風のスタイルを自己が語る珍しい一文だと思いますし、その通りだと思います。こういったスタイルをとり続けられたのはもちろん既に荷風が文学者として成功を収め、養う家族が居らず、そして兄弟の縁を切っていたから可能となったまさに個人主義者の極まりだとも言えます。そしてだからこその最後、なのでしょう。ここまで来るともう尊敬に値すると思います。孤独死なんて織り込み済みですが何か?くらいの感覚なんだと思います。

そして何度も何度も出てくる、恐らく荷風が1番心を許した友人である井上 唖々子(正確には井上 唖々が正しいのか?)が日記の最初の段階で既に故人である、というのが残念。どんな人物だったのでしょうか。

永井 荷風は、まともでまっとうな感覚の持ち主であり、しかしそれを大上段に構えて周囲に説き伏せるのではなくただ日記に書き付ける人嫌いの個人主義者であると同時に、非常にロマンチストであり、だからこそ、今ではなく過去にロマンを求め、しかも現実の女にもかなり振り回されているという人物であったような気がします。

昭和初期の東京銀座の、文壇の、日常の生活を垣間見て見たい方にオススメ致します。
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形式:文庫
岩波から6巻本も出ている。荷風の他の作品が,滅んでもこの作品だけは,残るといわれる作品。すごい和漢混合文である。ここに,本当に自立した1人の人間がいる。
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