一度は書いてみたい人のために、って、そんな内容、本にないよう。いくら本を売りたいからと言っても、中身と関係の無い副題は詐欺だよ。書きたい人のために、というなら、ちゃんとそういう原稿を集めて本を出せよ。
で、この本も、前年の『推理小説作法』と同様、雑文、エッセーの寄せ集めで、推理小説の書き方なんかとは、まああああったく関係がない。中身は以下のとおり。
1 私の推理小説論 有馬頼義 :いまとなっては彼の作品を読む人もいないが、当時は清張と並ぶ社会派で、とにかく後進たちの指導では名伯楽だった人物。推理小説は私小説だ、って、これは面白い。
2 推理小説の文章 松本清張 :なんと文体論だ。トリックだけ説明すりゃいいっていうもんじゃない。背景や心理の描写こそが、小説としての深みを生み出す。という話。
3 裁判と証拠 桐山隆彦 :警視庁参事官。物証、証人その他の証拠能力についての専門的な説明。ホームズみたいなやりかたぢゃ、犯人を当てられても、起訴はできんな。
4 毒物の知識 佐藤文一 :法医学者。おもに毒物の量の話。
5 監察医の話 吉村三郎 :実例が9つ。
6 犯罪捜査 長谷川公之 :捜査手順のマニュアル的紹介。映画の『警視庁物語』シリーズやテレビの『七人の刑事』で有名な脚本家。もともと法医学出身。
7 探偵小説の諸問題 木々高太郎 :慶応医学部教授で変人の小説家。まさに諸問題で、翻訳だの、ランキングだの、ばらばらの話に自分の感想を言い散らして1節ごとに並んでいるだけ。ネットによくあるブログの雑文みたいで、深みもなにもない。もう少し物事を考えてから文字にしろよ。到底、もの書きとは思えん。こうあるべきだ、ったって、あんたが決められるもんでもないよ。
というわけで、どうしましょうねぇ。本の体裁をなしていないくらい、ひどい。有馬と清張のところだけ読めばいいか、っていう感じ。でも、その2つは読んでおいたほうがいいとは思うんだよねぇ。