本格派推理小説の作者として知られる著者が、自身の経験を中心に述べた創作の手引き書である。タイトルの通り、基本的にミステリーを念頭に置いた作りとなっているものの、それに留まらず「小説」全般の書き方について役立つ内容が多い。
個人的には第4章の創作メモに関する話題(ネタの拾い方や、それをどのように作品にまで発展させていくか)が非常に興味深かった。続く第5章の、作品のリアリティに関する部分も重要だろう。「登場人物の一人一人についてプロフィールや身体的特徴を記した一覧を作る」という方法は私自身も実践するようにしている。他にも書き出し・結びのテクニックや作品のテーマについての論考、さらに、ミステリーのあり方に対する著者の主張などは文学論としても楽しめる。ただ、トリックについての解説が少ないことなど、純粋に「ミステリー小説」についての情報を求めている人には物足りない部分もあると思うので、そちらは他書(例えば江戸川乱歩の『類別トリック集成』など)を併せて参考にすることをお勧めする。
ミステリーに限らずリアリティ・構成力やエンターテイメント性などが求められる小説一般、さらに漫画などを描く人にも、いろいろと参考になる1冊なのは間違いない。