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シリーズ最新作とは言え、ここまで短篇を含め5作を読破しないと、この作品には辿り着けないはずだ。しかし一ヶ月で再版されるだけの馬力がこのシリーズにはまだまだあったということだ。それだけ待たせていたというのもやはり事実だった。根強い読者層がこのローカルな作家にもきちんと着いてきていたということなのだ。嬉しい。
何しろ『探偵はひとりぼっち』以来だ。最後のセリフは「わたし、お腹に赤ちゃんがいるの」だった。探偵の赤ちゃん。うーむ。そこで急に東直己の筆先は子持ち探偵・畝原に向けられて久しかったわけだ。1998年のびっくり結末以来読者は実に3年も待たされたことになる。なんと気を持たせる作家であることか。
そして本書では驚いたことに探偵は中学生になる息子に仕送りをしている。春子とは離婚している。そんな時間の経過があるかと思う。だが、よく考えてみれば、探偵シリーズはいつも今より少し前の時代、風営法が変わる前、ソープランドがまだトルコと呼ばれていた頃の物語なのであった。ローレンス・ブロックの『聖なる酒場の挽歌』同様に、いつも記憶のカーテンの向こう側にある過ぎ去って懐かしい「昔の」物語なのであった。
それが本書ではいきなり現代なのだ。畝原に作家の主体を持っていたばかりではなく、年齢と家族という荷物とをきちんとススキノ探偵の方にも課していたのだった。
さらに驚いたことにススキノ探偵であるはずの「オレ」が、遥か道北の寒村に舞台を移す。この田舎町の描写が実にリアルで可笑しい。ぼくが思うにモデルとなる町は幌*内ではないかと思うのだが、雪が深く、車で通り過ぎるのに1分も要らない。西部劇に出てくるような一本のメインストリートだけの町。シティでもタウンでもなくビレッジくらいに形容しておいた方が良さそうな町。そこに住む怪しげな人々。夜のバス停にうろうろする女子高生の描写のおかしさ。
うーん、まさに北海道しているのだ。観光や出張でしか北海道に来ない人々に是非お伝えしたい北海道の平均的田舎町の真実、とでも言いたくなるくらいの。
実にいろいろ驚かされてしまう物語であった。やはり畝原にはない行動をこ
の探偵は取る。やはりこの後もこのシリーズも続けて欲しい。また回想の昔に戻ってもいい。この作品のように現代に視点を変えてもいい。とにかく続けて欲しいのだ。
そんなアズマさんの、「これが答えだよ」という公式ステートメントが発端になって、書かれているのが本作だと思う。いまだに官依存でぬくぬくとしてその日その日をすごす人間が住む土地。ぬるぬるの警官や土建屋など、北海道の地方に住んでいる人が読んだら「あ、これってうちのマチがモデルなのかしら?」と思うくらいのリアルなキャラ設定。
45歳になった「俺」の孤軍奮闘とヤセ我慢はさらにエスカレートし、忘れられない人への、痛々しい思慕がいい塩梅にちりばめられていて、最後までイッキ読みさせてくれる。
アズマ作品は一通り読んでいるつもりだけど、冒頭の献辞と、あとがきが付記されているのは本作が初めてではないかな?本人にとって思い入れの深い作品なのでは?と深読みしてしまいそうだが、、、。
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