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排除の現象学 (ちくま学芸文庫)
 
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排除の現象学 (ちくま学芸文庫) [文庫]

赤坂 憲雄
5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

秩序創成のための暴力としての供犠。異人という内なる他者の殺害―それこそがあらゆる秩序の起源に横たわり、それゆえに現在も飽くことなく繰り返されている血まみれた光景である。いじめ、浮浪者殺害、イエスの方舟事件、超常現象への傾斜などの、まさに現代を象徴する事件のなかに潜む「排除」のメカニズムを解明する。

登録情報

  • 文庫: 323ページ
  • 出版社: 筑摩書房 (1995/07)
  • ISBN-10: 4480081984
  • ISBN-13: 978-4480081988
  • 発売日: 1995/07
  • 商品の寸法: 14.6 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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By Tod
形式:文庫|Amazonが確認した購入
 小学生の頃、当時地元では珍しかった浮浪者の寝床に、友人たちに連れて行かれたことがあった。陸橋の階段の下に布団が敷いてあるだけで本人はいなかったが、そのような場所で寝泊りしている人間がいることに衝撃を受けた。さらにショックだったのは、友人たちが寝床をメチャメチャにし、置いてあったコップを割るなどの破壊行為に興じている姿であった。しかも今にして思えば、それを最も熱心に行なっていたのは、クラスでイジメられていた友人であったと記憶している。
 本書を読んでなつかしさとともに、ずっと抱えていたわだかまりが多少なりとも融解してゆくのを感じた。イジメ、ホームレス、特殊学級、新興宗教などといった今でも見られる社会現象を、排除というキーワードによって分析した1980年代の労作である。
 とりわけ第1章のイジメ問題に関する考察は秀逸である。1980年代以降のイジメはそれ以前のイジメとは明らかに異なると赤坂は分析し、その原因の一つとして子どもたちが学校以外の生活圏を失っていることを挙げている。出口なき空間での終わりなきイジメの過酷さを、これほど鋭く抉った論述は稀有ではないだろうか。差異を排除すべく教育する学校において、子どもたちは強引に差異をつくり犠牲者を選び出す。子どもの世界のイジメを大人の世界の犯罪のカテゴリーにねじ込もうとするマスコミは、根本的な誤解をしているように思う。
 また第2章の浮浪者殺しの分析は、ホームレスが急増している現代にこそ読むに値する。「ホームレスを差別するな」という言葉がいかに空しいかは、わが子にホームレスになってほしいと願う親など一人もいないという事実からして明白であろう。社会がホームレスを作ったのであり、その社会がホームレスを差別するなと言うのは本末転倒である。
 対象への否定的感情が排除を生み出すのではなく、排除への欲求が生け贄を強引に作り出す。取り上げられている具体例の古さは否めないが、置き換えられる事例は現在いくらでもあるし、著者の鋭い考察は全く古びることはない。豊富な語彙を駆使した個性的な文体は小説のように美しく、かたくなりがちな論文を芸術作品の域にまで高めている。
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By dvrm トップ100レビュアー
形式:文庫
赤坂憲雄 「排除の現象学」

最近では東北学・津軽学などで知られている赤坂憲雄氏が1991年に発表した著作。「異人論」をはじめとした「排除」に関わる体系を、発表当時に展望できた世相に応用させている。あとがきに著者は、このような本はもう書かないことを示しているが、そうした方が著者にとって絶対にいいことだと思えるような、現代の日本ではとても差し障りのある内容になっている。

第一章から第五章までで取り上げられる材料は「いじめ」「浮浪者」「イエスの方舟」「けやきの郷」「精神分裂病と犯罪者」となっているが、それぞれの叙述の主題となっているのは、多数の人々が周りと違う少数派としての現象や人間たちをどのように排除していくのか、という心理的・社会的メカニズムだ。勿論どの章でも、手口こそ違うように見えても本質は一貫している。それは、自分たちが普段目にする多数派と外見的に、行動的に、信条的に違うように見える人への怯えと反感、それはそう感じる人たちが日々暮らしていく中で日々各々の心に自分自身の不安や不満を抱えているからなのだが、そんな他人への意識が排除を行わせ、排除が始まり、あるいは定着した後で他人を異常な人間として語ることを始める、といった動きをとる。著者は排除に自覚的に、あるいは無自覚に加担する人たちを「心の硬い人々」とするメルロ=ポンティのことばを紹介している。他人を理解できない人ではなく、理解しようとしない人、そのうえで排除しようとする人たちのことだ。彼らの中ではdifferentであることがwrongであることに、the sameであることがrightであることになる。少数者への集中攻撃が起こるとそこに一体感が生まれ、仲間意識や地域体としての絆が強められる。考えてみるとそれって日本では江戸時代に初めて制度として意図されたもので、徳川家康とその血族集団の政治的センスの鋭さに改めて感心する、というか背筋が寒くなる。村八分、というシステムは地方にも万遍なく拡がり、「かくましぼー」「はんつけ」など土地土地の方言にも残った。

確かに、この線を現代の社会に対してシビアに論考し続けて展開していく学者はあまりいないだろうし、陽の目を見なかったり嫌な目に遭いつづけたりすることは目に見えている。この文庫は、80年代当時に流行してここでも使われている、気取った思想用語を読み換えた上で読み込めばとても過激で、日本のマスメディア情況も暴き立てている一冊。読者一人一人にとって決して無縁ではない話しが溢れている。
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