日本政府は09年3月、ウクライナから3000万トン、チェコから4000万トンの排出枠を購入しました。購入額は、他国との交渉への影響を避けるためとして公表していません。伝えられるところでは、排出枠の価格は、金融危機の影響で08年夏の3分の1程度だったため、買い時と判断したとのこと。そうだとすればご同慶の至りですが、政府がいつも有利な判断をするとは限りません。それは年金資産の運用成績などを参照するまでもありません。チェコとウクライナに支払った金額は、合計で1000億円近いと聞きます。時期や判断が違えば同じ排出枠に3倍の3000億円必要だった計算です。その差2000億円。真面目に日々省エネに取り組むのが馬鹿らしくなるようなマネー・ゲームの世界です。
本書は、こうした「排出権取引」の制度的不公正さや取引参加者の思惑をえぐり出しています。著者の立ち位置の温暖化懐疑論、ゴアいんちき説などについては到底同調できない読者も多いにちがいありません。用語法や文章も決して分かり易くはないですし、英語表現がやたらと併記されているのも意味不明です。しかし、温暖化問題を考えていく上で、こういう視点、考え方もあることを知るのは有意義といえます。
温暖化ガス削減の中期目標をめぐり、「(4%増などという)目標では世界の笑いものになる」「野心的な目標で志を示せ」と環境相の鼻息は荒いです。でも、その類の情緒的アプローチでは、それこそ笑いものにされるようなシビアーな現実があることを気づかせてくれる本です。温暖化防止の世界はきれいごとじゃないです。