「犬と小説家と妄想癖」を読んだ時からずっと、待っていた一冊だった。「犬と〜」の本編が小bに掲載された時、たったワンシーン顔を出しただけで、主役を完全に食ってしまったスーパーサブ、沖屋統と年下の恋人水梨隆之の物語である。
毛並みのいい高慢な猫のような沖屋に惹かれてしまったのは、沖屋が編集長を務める出版社でバイトをしていた年下の隆之。
優しく誠実で一途な隆之が、美人なのにクールな沖屋に振り回され、悶々と悩む様子がなんとも言えず可愛い。
隆之視点であるにも拘わらず、毒舌家で皮肉屋のくせに、本当は隆之をとても大切に思っている沖屋の心情も、読んでいて行間から滲むように伝わってくる。
だからこそ、読んでいて隆之を応援しつつ、実は不器用な沖屋のことも可愛いと感じてしまう。
書き下ろし続篇では、沖屋の昔の恋人を前にして、ぐるぐると悩む隆之の若い魅力を余すところなく書きながら、一方で自分のせいで転落した過去を持つ恋人を思いやる沖屋の繊細さも書かれている。
隆之視点で話を進めながら、三者三様の心の動きをきちんと伝えられる筆力はさすがだと思った。
元々、実力派の高遠さんだが、ここ数作でぐんと厚みも深みも増したのではないだろうか。
久々に、上質なラブを堪能させてもらった気がする。