新約聖書を構成する諸文書のオリジナルの原本は現在見つかっておらず、その代わりに大小あわせて膨大な数の写本が存在します。その写本間の異同を調べ、可能な限りオリジナルの原本の姿を再現しようとする学問が本文批評学です。本文批評学をリードしてきた一人にメツガー教授がおり、その著書『新約聖書の本文研究』(日本基督教団出版)は定評ある教科書ですが、本書はそれをさらに一般読者にわかりやすく、本文批評上の論点を開示してくれる本です。アールマン教授は、上記メツガー教授の教科書の第4版の共著者でもあり、Loeb Classical Libraryに収められた使徒教父文書の校定本の著者でもあります。本書で上げられている本文批評上論争となる異文については、例えば、新改訳聖書の欄外注にもほとんど記されていますが、異文と現在の本文のどちらを取るべきかについてのアールマンの判断については、読者の中には同意できない部分もあるでしょう。しかし、反対意見も紹介されており、異説ながらも公平さを失わない誠実さをもった本だと思います。その意味では、訳文は、ちょっとセンセーショナルさを打ち出しすぎな感が否めない部分もあります。聖書翻訳や聖書解釈に関心のある方にお勧めします。