本書は、副題に「ヨーロッパ三大オーケストラ物語」とあるように、ウイーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボー管弦楽団の3つのオーケストラを中心に、オーケストラを語った本です。
本書はこれらのオーケストラの歴史を淡々と史実に即して語った本ではなく、音楽に長年かかわってきた著者が多くの音楽家たちに語りかけて得られた証言をもとに、3つのオーケストラについて著者独自の観点でその輪郭を描き出しています。
「指揮者の役割」という主題ですが、むしろ指揮者、コンサートマスター、演奏者など多くの人でオーケストラが構成され、それぞれの技量や想いが演奏を形作っていることがわかる本です。
3つのオーケストラにまつわる話ですが、それにとどまらず広範囲に話が及んでおり、また相当たくさんのコメントを集めています。著者独特のもってまわった修飾語の多い文章で300ページ余りもあるので、読み終えて「どっぷり音楽の話に漬かった」と言う感じがする本であり、少し疲れる感じもします。
けっこう興味深いエピソードもたくさんある反面、「ちょっと著者の観点が入りすぎ」という部分もあって、その評価は人それぞれでしょう。
私は、特にコンセルトヘボーの指揮者やコンサートマスターがどのように演奏を形作り、このオーケストラの歴史を作ってきたかというストーリーが一番興味深かったです。
それぞれの証言の真偽・取捨選択、著者の主観的な見方・好みなどの要素が入っているので、この本に書かれた内容が「史実に即した客観的事実の記述」というわけにはいかないでしょうが、「一つの主観的な視点から見たオーケストラ観」として読めばそれなりに楽しめる本と思います。