どんなに技巧的でも、どんなに刺激的でも、愛しい相手とのセックスに勝る快感はない。
だからこそ男も女も、愛しく思える相手を求めて彷徨うのかもしれない。
けれども支配欲や所有欲に惑わされると、より多くの相手と交わることが目的化してしまう。
そしてコンプレックスが歪むと、いかに一般的評価が高いか、なんてことで相手を選んでしまう。
瀬能は、意図せずに多くの女性を愛おしく思える男。
それは「能力」と言っていいのかもしれないと思った。
相手に幸福感を味わわせる能力。
執着心もなければ、他人の眼も気にならない。
目の前の可愛い女に、できるだけのことをしてあげたい。
ここに登場する、愛しい相手に抱かれることを心の底から願っている女たちは、その愛情の前にすべてを曝け出し、歓びに身を捩る。
性別的にも、嗜好的にも、受け身の愛情がもたらす官能を知らない俺には、想像も及ばない。
ただ知っているのは、お互いに愛おしく感じる相手との貪るようなセックス。
その目眩めく陶酔感。
だが、それも女性の何十分の一なのかと思うと、この小説の良き読者は女性なのかもしれない。
歓喜にうち震える女性たちの姿に、そんなことを考えた。