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持ち重りする薔薇の花
 
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持ち重りする薔薇の花 [単行本]

丸谷 才一
5つ星のうち 3.7  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 単行本: 199ページ
  • 出版社: 新潮社 (2011/10)
  • ISBN-10: 4103206098
  • ISBN-13: 978-4103206095
  • 発売日: 2011/10
  • 商品の寸法: 19.4 x 13.4 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.7  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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弦楽4重奏のプレイヤーの、30年に及ぶ人間関係のもつれ(主に男女問題)を描く。
もちろん物語は単純な構成ではなく、
奏者4人の後援者である財界の重鎮が大手出版社の元編集者(この二人の付き合いも長くいろいろあった)
からインタビューされる、という形をとる。
どんな凝った設定でも、話の中身は退屈かつ空疎である。
ほとんどが男と女のもめ事で、エロチックに書いてあるつもりの箇所も、ちっともエロチックではない。
話者(財界人)はひとり息子を事故で失い、妻はアル中の極みで無様な死をとげ、
事実は重く、かなりどろどろしているはずなのに、
小説の語り口はそれらをアルコールできれいに消毒し、あくまで淡々として洒脱である。
その語り口がかえって、深刻なはずの中身までも骨抜きにしているのである。
別に深刻なことやどろどろしたことを、それにふさわしい表現で語ってないからダメ、と言っているのではない。
もっと別の理由があると思われる。
理由の一つに、こういっては元も子もないが、老いることの身勝手さ、というものがあるような気がする。
それはそれで小説の魅力になりうるのだが、本作では逆に作用している。

小説の中にこんな一説がある。
「近代日本の芸術や文章は一般に何か洗練を欠いていて、とにかく泥くさい感じ、野暮ったい感じになりがちなのだが、
その弊をすつきりとまぬがれていて、洒落っ気があり、粋である。」(現代仮名遣いに直してます)
これはカルテットを褒めている言葉なのだが、そのまま丸谷氏の文学、文学感にあてはまるだろう。

最後は話者の芸術感が語られているのだが、別に目新しいことを語っているわけではない。
弦楽4重奏について、すこし知識が得られたことが収穫でした。
ハイソな方たちの物語です。

しかし、ブルー・フジ・クヮルテットって名称、すっごくダサくない?
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10 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
博学才知の文学者がものした最新作を、その思わせぶりな題名に誘われて読んでみましたら、なんのことはない私の好きなクラシック音楽の世界の話で、しかも東京カルテットに似たさる弦楽四重奏団の内幕、四人のメンバーの離合集散や栄光と悲惨を、面白おかしく大人の物語に仕立て上げました。

四人併せて一つの楽器と称されるカルテットを続けていくことは難しい。それは四人で薔薇の花束を上手に持つようなものだ、という苦労話が微に入り細を穿って延々と続きます。

しかしこの物語の語り手は、その名も「ブルー・フジカルテット」という世界的な弦楽四重奏団の名付け親であり後見人でもある財界の超大物で、彼が残り少ない生涯の思い出と抱き合わせに、このカルテットの誕生と栄枯盛衰の裏話を死後発表を条件に包み隠さず知己の編集者に物語る、というスタイルが、この表向きはポップなフィクションに微妙な陰影を与えているのです。

古典音楽に対する著者のうんちくや英仏独羅とりまぜた鼻もちならない弦楽ならぬ衒学趣味や、男と女の色恋沙汰やポルノまがいの下世話な人情噺も遠慮なく飛び出しますが、最後の最後はさすがに老成し達観した文化勲章受章者らしく、おもしろうて、やがて哀しき人世と芸術への感慨がふと漏れ出てくる。かのヴェルデイの最高傑作「ファルスタッフ」を見聞きした後に似た読後感でした。

惜しむらくは小説の中で著者がいくらボッケリーニやハイドンやモーツアルトについて語っても、吉田秀和氏のエッセイとは違って、肝心の音楽がちっとも聞こえても来ないことでしょうか。

音楽について語って音楽が聞こえてこない論者の至らなさ 蝶人
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瑞々しき円熟 2011/11/17
By 麒麟児 トップ500レビュアー VINE™ メンバー
丸谷才一氏八年振りの長編小説ということで一読。長編というよりは「中編+」という感じですが、期待は裏切られませんでした。音楽(弦楽四重奏)の薀蓄とM&A(企業買収)ネタを一作に織り込んで、飽きさせないその手練手管。日本語の美しさそのままの滑らかな語りと諧謔そしてユーモア。主題(カルテットの人間模様)を描いた第2章と第4章の間に挿まれた間奏曲(第3章)の絶妙さ。殺伐とした日常を一時忘れました。

「でもわたしにとって何より役に立つたのは、彼女のM&A、吸収合併業者としての忍耐強さを学んだことでした。まあ考へてみれば、厨川君の復帰といふのは吸収合併に似てないことはない。そっくりだとも言へるでせう」(160頁)。

それにしても「柔いボタン」(176頁)とは云い得て妙の言葉。また、「conflagration」(大火事、47頁)や「cockney」(ロンドン訛り、60頁)など、英語の勉強にもなりました。まだまだ続作には期待できそうです。
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