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北欧・ケルト神話をモチーフにしながら,独自の世界観をつくり出しつ
つ,エンターテイメントとして本来神話には不在の登場者の内面の葛藤
や精神的価値観を描写しており,訳者の技量もあり楽しめる作品です。
良かった点は
1.北欧神話,ケルト神話の世界観をベースにしながらも,適度に世界
観について説明を挿入することで,間口を広げた物語構成
2.上記神話に多少でも知識がある読者に対しては,より没頭できる世
界観/設定と,小話(失礼)の数々
3.古臭さを感じさせない壮大なストーリーと,現代にも通じる運命に
翻弄される人間という卑小な存在の描き方
良くないかな,と思った点は
4.出版元がSF文庫と銘打ちながら,完全なファンタジー小説
5.緻密かつ繊細な物語ゆえ,上記神話への造詣が全くないと,半減す
るであろう内容そのもの(仕方ないといえばそれまでですが)
6.結末については賛否両論あるかと(私は賛成派ですが)
個人的には文庫本3冊位のボリュームでこれを書いて欲しかったような
気がします。世界観に魅力がある同作品,文庫本一冊で終わってしまう
のはちょっとさみしい気もしました。
とはいえ,近年のライトファンタジーに飽きた方には,読み応えのある
骨太のストーリー,お勧めです。後書き(解説)にもあったように,
後年この作品が高名なマイケル・ムアコックに影響を与えた,という
くだりも納得できる完成度です。
北欧の民話と神話の一説として語られてしまいそうな創りは感触としてはワーグナーの各戯曲に近い。
各シーンに引用された神話要素には、わかる人は思わずほくそ笑まずにはいられない。
同時期に発表されたという「指輪物語」はいささか世界感を把握するのに時間を有すので挫折者が多いことを思えば、この作品は元ネタがあるぶん、世界にすんなりと入り込める。
個人的な希望をいえば
無駄に介入してくる神様タチの暗躍を某ラグナログまでシリーズ化してくれたら・・・と思わずにいられません。
神話スキーにはお薦めの逸品ではあります。
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