本書は知る人ぞ知る異端のファンドマネージャー大竹慎一氏の最新刊である。
氏の根本的な主張は、少なくとも私が交流を始めたこの20年来大きく変化しているわけではないが、その時々において警鐘の対象は変化して行く。
今回の主張にはまず、中国脅威論、中国の高成長、元高は幻想であるということがある。また、日本経済の危うさと不動産価格のさらなる下落も論点となる。昨今の円高の背景に対する世間の考え違いを指摘し、改めて日本人の思考法のおかしさなどにも言及している。
どれも一般的な常識とは異なるものであり、多くの人には違和感のある内容と考えられる。しかし、氏が1980年代末のバブル崩壊以降、かねがね主張してきた都銀消滅論、日経平均4,000円、地価10分の1など当初多くの人々は冷ややかな目で見ていたが、時間の経過とともに現実味を帯びてきたことを考慮すれば、無視できない主張であろう。
さらに結論としては、その中でどう対処すれば、自分の身を守れるかについても論じている。
氏はファンドマネージャーであるが、その書籍はどれもその対象を株式投資に限っているわけではない。株式投資以外の様々な投資を初め、事業投資や一般の人々の生活にも深いかかわりを持つ事象を対象としており、それぞれに役立つものとなっている。
実際私自身、日本人とは全く異なる氏のものの見方、考え方から学び、私自身の資産形成、生活設計、職業選択に大いに活用してきた。また、経営者の中にも氏のアドバイスで危機を未然に防いだ方も多い。
本書の冒頭で述べているのは、2012年から2015年に大恐慌が来るが、その引き金を引くのは日本か中国であると述べている。
日本の問題点をずばり指摘しているのが、サービスレベルと賃金レベルのギャップである。まず、地方の公務員給与の高さが大きな問題となる。市民の平均年収200万円の地方で、公務員の50%が年収700万円以上というような状態が放置されてきたため、その改革が始まっている。公務員同様、そのサービスレベルに所得水準が調整されなければならないのが、電力会社と銀行と指摘している。一部特権階級がサービスレベルと水準のかけはなれた所得を得ていたことによる破たんの構造はギリシアと全く同じである。
それら特権階級の給与同様、今後大幅な調整が必要なのは、土地価格である。特に地方都市の土地価格は半値以下になる可能性もある。そうなると、今不動産投資に妙味があるのは、逆にリスクを感じている本当のプロが手を出さないためと見ることもできる。
日本が大恐慌の引き金を引くかもしれないということに対しては、賛同する人もいるかもしれない。一方、中国の高成長、元高は幻想であるという考えの日本人は少ないかもしれない。しかし、考え方はシンプルで、基本的にはかねてから主張しているように、計画経済の通貨は基軸通貨には決してならず、一部の富裕層のみが潤い、大衆が全く育っていない中国にはかつての日本のような高成長の実現はあり得ないというものである。
為替に関しては、消去法で円が買われているわけではなく、買われるべくして買われており、やがて1ドル60円、1ユーロ90円とも述べている。大国間の通貨の動きは過去の理論は当てはまらず、デフレの通貨が上がる。それを世の中のエコノミストは間違っている。
これらのことは、奇をてらって、結果的にはずすことが多い評論家のたわごとではない。これまで、世間では誰も言わないうちから、次々と言い当ててきた大竹氏の話だけに、その背景は改めて確認しておく必要があろう。
むしろ、日本の常識は世界の非常識であることが多いのであるから。そこで、世界の常識から見た考え方の基準を最後に示し、われわれが来るべき大恐慌に備えてどう対処すべきかを説いている。
改めて繰り返すと、株式投資を行う人は当然、為替、商品などの投資を行う人にも極めて有益な書籍であろう。また、事業を行っている経営者の方にもぜひ読んでもらいたいし、一般の方々にも真実に目覚めるきっかけを与えることであろう。