他のレビューの評価が高かったので期待したのですが、新しさは感じられませんでした。他人の発見や自明なことに独自の名前を付けているだけのように思えました。
他人の発見の例。
1. 著者の言う「妹尾のイノベーション七原則」は Clayton Christensen の主張(『イノベーションのジレンマ』等)とどう違うのでしょうか。また、イノベーション(改革)とインプルーブメント(改良)を区別すべきとも書いていますが、それまで別個に議論されてきたことを同一座標の上に統合したことが Christensen の分析の新しさなのです。著者の部分的改変は単なる後戻りです。
2. 本体を安価に提供し消耗品で利益を上げる方法を、「私はピストルビジネスと呼んでいる」と書いていますが、普通の人はジレットモデルと呼んでいます。独自の名前を付ける必要性を感じません。知らない人が聞いたら著者の発見かと錯覚してしまいます。
他の記述も Geoffrey Moore (『キャズム』等)や他のマーケティングの本で読んだような内容です。
自明なことの例。
1. 著者はインテルやアップルのビジネスを、「インテルインサイド」、「アップルアウトサイド」と名付け、どちらも「内プロプラ、外標準」、「内クローズ、外オープン」だと書いています。ですが、内側を独自にしなかったら誰でも作れますし、外側の入出力を独自にしたら何も接続できません。ある製品(CPUやパソコン)がさらに大きな全体(パソコンやネットワーク)の部分であれば、外側は規格に合わせる以外にありません。アップルの製品は、むしろ入出力規格以外の外側の要素である意匠や操作性を独自にすることで、差別化を図っているのではないでしょうか。名前を付けたり分類したりすることに目を奪われ、本質を見抜くことが疎かになっているように感じます。
2. 「成長」と「発展」の違いに気付いている人がいないと書いています。一般的でない定義を勝手に与えて質問すれば、著者以外には答えられないでしょう。前者を「量的成長」、後者を「質的成長」とすれば誰でも答えられたはずです。
カタカナ語がものすごく多いのも気になりました。馴染みの少ない言葉は、読む人を煙に巻くには使えますが、ものごとを分りやすく伝えるには不向きです。カタカナ語の導入とその説明で無駄に長くなっているように思います。
大学の先生というよりも売り出し中のコンサルタントが書いた本のように感じました。某国立大の先生が嘆いていらっしゃいました。独立行政法人になって、学問の発展に貢献するよりも、企業からたくさん予算をもらえるものが良い研究とされるようになってしまった。この本に独創性があるというなら、カタカナではなく英語で論文を書き、査読者がいる論文誌に投稿してみてはいかがでしょう。
もちろん、本は独創性だけで評価されるものではありません。それを言ったら教科書はすべて誰かが既に言ったこと、書いたことです。ですが、この本の場合、著者が発見したように書いてあるのが気になるのです。
[追記]
2011年11月25日から26日にかけて「いいえ」が5個入りました。ほとんど票が動いてなかったんですけどね。他の否定的なレビューが下がり、肯定的なレビューが上がりました。何かあったようです。