実は米大リーグには専属の打撃投手は存在しない。「日本の練習時間の長さ」という特殊事情が生んだ打撃投手という職業は、日の当たらない地味なプロフェッショナルの仕事を尊ぶ、日本社会の縮図でもある。
過剰な自己犠牲を正当化する、一昔前の組織論を美化するつもりは毛頭ない。しかし、自らを殺して組織を生かすことに徹する「元プロ野球選手」たちの物語には、「プロとしての生き方」を貫く男の矜持がある。野球好きのビジネスマンにはお勧めの1冊だ。
(日経ビジネス 2003/09/08 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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本書はそんな打撃投手たちの人生に丹念なインタビュー取材で迫った力作です。ハンク・アーロンと王のあの伝説のホームラン競争で投げた「王の恋人」をはじめ、元近鉄・石本や元南海・藤本など30代プロ野球ファンには懐かしい名前もあります。
「炎天下200球300球をひたすら投げ続ける彼らをドライブするものは何か。「人間バッティングマシーン」と自嘲気味に語る言葉よりも打たせる職人としての芸に誇りをもつ男たちの姿のほうが印象に残りました。
「一体、彼らはどんな気持ちなのだろうか?」
そんな素朴な疑問から、この本を手に取った。
今ではプロ野球の各チームを当たり前のように支える打撃投手だが、その誕生は意外に新しい。この本では、その誕生から現在に至るまでの名・打撃投手達を、丁寧な資料調査と密着インタビューとで紹介しており、一気に読める。
確かに、プロとしては、生き残れなかったかもしれない。それでも、現在のチームは打撃投手無しでは、調整もままならない。その重要性を実感していた王・長嶋の逸話も泣かせる。彼らは、専属の打撃投手がいたからこそ、自分達の栄光が際立つことを知っていた。
打撃投手として生きると言う、想像を絶する葛藤の一方で、別の見方をすれば、大打者に感謝されるほどの仕事である。尊敬に値する職業に間違いない。プロ野球ファンとして、すでに打撃投手も引退した彼らに拍手を送るとともに、現役の打撃投手たちにはエールを送ろう。
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