この本のタイトル『打つ手は無限』を座右の銘にしている人は多いのではないでしょうか。私もその一人。
『打つ手は無限』という言葉を唱えたのは、千葉船橋の中小企業経営者滝口長太郎氏。中小企業とは言っても、問屋、不動産、レストランなど多角的な経営を行っていたいわば実業家です。著者は滝口氏の事を父親のように慕い、多くの事を学んだ事からこの言葉を本書のタイトルにしたとのエピソードも。
本書には、実に多くの業種の今と昔、そしてこれからどう変貌して行くかが詳細にかつ分かりやすく記載されており、なるほどなと思うアイデアから、“基本的な極意”まで、その全てにオリジナルのエピソードを交えつつ持論を展開しています。さすが様々な業種に触れているだけあり、私はこの本をまるで業種別インデックスを引くかのように検索、情報収集を楽しみました。
本書の中で、筆者は“繰り返し”の重要性を強く主張しています。
1章第4節住宅、建設、不動産業の変貌では、住宅業界を今後の有望な成長産業をした上で
安定とは「繰り返し買ってもらうシステム」と表現。
なるほど繰り返しの中に安定を見いだすのか。では、繰り返しを生み出す為には何をすべきなのでしょうか。その答えは、京都とディズニーランドにありました。
第2章2節「遊び」の変貌と戦略ー「繰り返し」が繁盛の決めてーP129
〜一過性のものは、何の商売でも厳しい。特に、大きな投資を行う事になるレジャーやリゾート開発は、一種の施設産業であるから、繰り返し、繰り返し、幾年も同じお客様に可愛がってもらわなければならない。〜
つまり、京都もディズニーランドもバラエティに富んでいるからこそ“安定”しているのだ。と。安定を求めるということは、変化を求めるという事に等しい。とはなんとも逆説的な話ではないですか。この二つの違和感を見事に融和してくれたのが、あとがき。筆者はここに、ダーウィンの進化論を引用します。
〜種の存続条件、最後に残って栄えるものは、厳しく、激しい数々の環境や状況の変化に耐え、弾力的に沿っていくものだけである。〜
多くのビジネス書で語られる“進化論”、変化を受け入れたものだけが生き残れる。と環境に対して受け身な変化を説く本は数あれど、『変化そのものを能動的に起こして行く』企業=生物としての生き抜く本能を安定とするまさに“攻撃は最大の防御”的視点は、読了感が清々しく良いです。
打つ手は無限 滝口長太郎作
すばらしい名画よりも、
とてもすてきな宝石よりも、
もっともっと大切なものを私は持っている。
どんな時でも、どんな苦しい場合でも、
愚痴を言わない。
参ったと泣き言を言わない。
何か方法はないだろうか、
何か方法はあるはずだ、
周囲を見回してみよう。
いろんな角度から眺めてみよう。
人の知恵も借りてみよう。
必ず何とかなるものである。
何故なら打つ手は常に無限であるからだ。
ちなみに、今年は平成23年。今読んでも十分に面白い。