武島直貴の兄・剛志は、弟を大学に入れてやりたいという一心から、盗みに入った屋敷で、思いもかけず人を殺めてしまう。判決は、懲役15年。それ以来、直貴のもとへ月に1度、獄中から手紙を送る剛志。一方で、進学、恋人、就職と、つかもうとした人生の幸福すべてが「強盗殺人犯の弟」というレッテルによって、その手をすり抜けていく直貴。日を追うごとに、剛志からの手紙は無視され、捨てられ、やがて…。
1999年に刊行された『白夜行』以降、著者は『片想い』 『トキオ』など、連載小説という発表形態を通じて、読み手を飽きさせないだけのストーリーテリングの実力を確実に身につけてきた。新聞連載された本書も、バンドデビューや窃盗事件などの出来事を積み重ね、そのつど揺れ動いていく直貴の心の危うさを巧みに演出しながら、物語を引っ張っていく。しかしながら読み手は、たえず居心地の悪さを感じずにはいられないだろう。なぜなら、直貴に向けられる差別は、私たち自身の中にも確実に存在するものだからである。「差別や偏見のない世界。そんなものは想像の産物でしかない」と言い切る直貴の言葉が、ずっしりと心に響く。(中島正敏) --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 1.0
最後の二章がいらないのではありませんか。,
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レビュー対象商品: 手紙 (文春文庫) (文庫)
初めて東野圭吾さんの作品を読ませていただきました。なかなか読み続けるのが辛い作品ではありまして、この一冊に一週間もかかってしまいました。 さて、物分りのいい社長さんの発言、兄への自分が出していない手紙...と盛り上がってきてハッピーエンドと思いきや、最後の二章で頭がぐちゃぐちゃになりました。なんで社長さんが2度も出てこなくてはならない?、事件を起した者、その親族は一生差別、苦しむべきなのだろうか?単にハッピーエンドはいけないこと? 部分的な心理の描写は力のある人だと認めます。ただ、どうこの物語を終わらせるべきか迷いが最後の二章にはありました。この作品を五つ★につける方も理解はできるのですが、「犯罪を犯した人間は一生救われない」というモチーフは社会復帰をめざす方の大きな障害にしかなりません。 私がこの本を塀の中で読んだら、死ぬしかないと思いざるを得ないだろうと思います。 パンドラの箱を開けて、「希望」が残ったと思ったら、何も残らなかった話です。
74 人中、62人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
どこか遠い世界の話ではなく,
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レビュー対象商品: 手紙 (文春文庫) (文庫)
映画化もされて、いまはどこの本屋さんにも平積みになっているベストセラーだが、やはりそれだけのものがある、とすべて読み終わってそう思えた。強盗殺人犯の弟として生きていく、というところに遥か自分とは遠い世界を思っていた。 しかし、その世界は決して遠いところにあるものではなく、自分のすぐ隣、身近にあるものだった。そう気付かせてくれる小説である。「強盗殺人」というもの自体、多くの人にとっては縁遠く感じているものだが、この小説に出てくる人物は決して特別ではない。直貴を繰り返し繰り返し苦しめてしまうのは周囲の人物に違いはないのだが、特別に嫌な性格の人物たちが集中しているわけではなく、自分の胸に手をあててみてもいろんな面で理解可能な周囲の人たちの行動の連続なのである。 様々なきっかけを読んだ人に与えてくれる小説である。 「手紙」は、考えていた以上に、ずっしりとたくさんの気持ち、書く人読む人両方の気持ち、を運んでいた。
56 人中、47人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
きれいごとではない現実を私たちに突き付ける本,
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レビュー対象商品: 手紙 (文春文庫) (文庫)
読後、小説から本の帯に抜粋された言葉をあらためて読んだ。納得したくないのだけれど、納得せざる得ないのか?微妙な感覚に、いまだに頭を整理できずにいる。すごい本を読んでしまった。学校の道徳のテキストや新聞掲載の小随筆などには絶対に出てこない現実を突き付けられて戸惑いを覚えながらも、頷きながら読むしかなかった。 殺人犯であり服役中の兄のため、主人公である弟が社会的に様々なものを失い、兄の犯罪が自分のためのものであった故にこそ、一層苦しみ、社会、そして兄を憎む姿は、切なく辛い。 しかし筆者は筆を緩めることなく、これでもか、これでもか、と主人公を苦しめ続けるのだ。 そして兄との完全な別離。 犯罪加害者の身内の真の痛み、苦しみとは、またその社会的な必然性とは何か。最後の場面はあまりにできすぎていた感は拭えないが、きれいごとではない現実を深くえぐった作品であった。
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