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たとえば……水村さんが美術学校に通っている最中にドストエフスキーを読んで人生が変わったことや、『マルテの手記』での死と時間についての考察はプルーストにもつながっていくことなどなど。結果として、単なる名作の紹介だけにはとどまらず、個々の作品への考察や、さらには両者の文学観までもが語られていく。
作家がそれまでに出会った文学の名作を思い返して語るということ、それはつまりその人生を振り返り自分の考えを確かめるという作業にもならざるをえないのだろう。
いや、たとえ作家でなくとも人生のあいだに一度はこんな幸福な時間をとりたいもの。というのは、文学好きな人なら誰もが一度は青春の時期に経験しただろう、あの文学との濃密なつきあいを通してしかありえない人とのやりとり。それがいかに心ふるわせるものであったかということを思い出させてくれるからだ。
むかし、文学少年少女だった方々向きの本かもしれません。
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