著者の著作はいくつか読んだことがあり、その中には、とても力作で意義のあるものもあります。
しかし、この本は、正直、評価する要素が少ないと思います。
(a) 著者の考えを様々なテーマにわたって述べているが、サブ・タイトルの「格差社会を生き抜く処方箋」というような意味のある記述はほとんどない。何か具体的なノウハウを得ようと思う人は読むべきではない。
(b) 「本書は日刊ゲンダイと文芸春秋などに掲載された文章を元に、加筆、再構成して成ったもの」とのことでああるが、テーマがとても古いものが多い。一般的には、古いテーマでも現代的な意義のあるものもあると思うが、本書の場合、「ただ古いだけ」という感じ。
(c) 内容が軽い。下調べをあまりせず、日々の雑感を綴っただけ。「なるほど、そうだったのか」とか、「そういう考え方もあったのか」というような記述はほとんどない。
(d) 各テーマは、新書の2ページ程度。その程度の分量で意味のあることを書くのは困難。内容が乏しいのであれば、ウイットのある文章を読みたいが、文章表現も凡庸。
この本には、「著者はたくさんの著作依頼に忙殺され、金銭的にも全く困っていない」旨が、しばしば書かれています。
私は、この程度の本を出して世間で通用すると思う、著者の「おごり」と「緊張感のなさ」にとまどいを感じました。
世の中には、本書の著者より、もっと意欲的な書き手がいると思います。「出版社は、そんな人にこそもっと書くチャンスを与えてあげるべき」と感じさせるような、「ぬるい」、「毒にも薬にもならない」というような内容です。