このアルバムは数ある太田裕美のアルバムの中でも1,2を競うほどの超名盤である。このころの松本隆・筒見京平のコンビで作られるこうした曲目は実に素晴らしいもので、彼ら無くしては決してこうしたアルバム作り得なかったであろうし、それらは30年近く経った現在でも決して色褪せてはいない。また、ここでは、特に萩田光雄の編曲が光っている。
まず、1曲目の「オレンジの口紅」がいい。海がきらきらと光り出し、海辺の香りがこちらまで漂ってくるのがわかる。‘サマーセーター’とか‘冷や汗かいてたコカコーラ’とかのフレーズが甘いメロディに乗って、非常に印象的に使われている。「わかれの会話」は、直前にヒットした「木綿・・・」のアイデアをもう一度拝借したような歌詞・曲調である。安易な発想といえばそれまでだが、それでも映画のワンシーンを思わせる曲の仕上がりは大したもの。ただ、ここに出てくる男の心は勝手すぎると思う。「青空のサングラス」は、恋と決別した女性の一人旅(いや、犬との二人旅か)を綴ったこれまた名曲。イントロやアレンジがすごくスマートでご丁寧に犬の声までちゃんと入っている。「トラック野郎」「ジュークボックス」「ゾロ」(彼女が飼っていた犬の名、アラン・ドロン主演の同名映画から借用)のフレーズも懐かしい。
あと1曲、どうしても忘れられない超名曲がラストの「茶色の鞄」である。印象的に綴られていく歌詞、郷愁をそそられるメロディは、どうしても自分の学生時代とオーバーラップさせてしまう。さりげなく入っているギター伴奏もいい。おっと「赤いハイヒール」を忘れておった・・・。まさに名曲の宝庫と言えるアルバムだ。