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私は切っ先鋭い幸田文が好きなので、著者の文章には正直もの足りなさを感じる。
文末が読者への投げかけで終わる文が多いこと。
目に映ったものごとをさらりと受け止めるだけで、他の物事との関連付けとか深く掘り下げることをしない姿勢など。
しかし幸田文の著作に興味をもつものにとって、著者をすぐ傍で見つづけたひとの記録はありがたい。
著者が子供の頃に見た鋭い月のことを語れば、幸田文が誤ってメチルアルコールの入ったお酒を、幸田露伴の受勲のお祝いの客人に出してしまった、という話を思い出し、そういえば、あの話の「血相を変えて家に駆け込んできた」娘はこの著者のことなのだ、同じ夜の月だろうか、と思う。
祖父・露伴を恐れ、緊張し、できるだけ遠ざかったいたという正直な言葉にも、子供のときから周囲に気遣いながら暮らしてきたおとなしい気質の少女を、才たけた二人の肉親が知らずに抑圧していた様子が見える。
その中でも「過ぎた時」は子供の頃の思い出話もあり、特に「お菓子と子」のエピソードは洋菓子屋さんとのやりとりが「小石川の家」を彷彿とさせます。
お使い道はなんでございましょう、お嬢ちゃまのご注文はこれでございますね…という、番頭さんの言葉の美しさにも古きよき日本が感じられました。
「つながり」のエピソードも幸田露伴や幸田文にまつわるものが多く、幸田家3代目の青木玉というエッセイストはこんな環境で形成されてきたんだなあ…ということがうかがわれる良作だと思います。
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