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となるとプロジェクトXのような熱血根性物語と思われるかもしれませんが,そういう血と汗と涙のストーリーは最小限におさえられ,実に淡々と,その成功の歴史および道具の工夫が描かれてゆきます.眉をつり上げて深刻に水不足に挑むというよりは余暇の楽しみ方の一つとして,淡々としかし着実に進むさまが印象的です.その不思議な「静けさ」が,この本の魅力ともなっています.
また,身体と頭脳を駆使して大地とふれあい格闘した経験が,その後の人生に何をもたらしたかについても言及してあり,人と自然の関係についていろいろ考えさせてくれるという点も見逃せません.
さらにもう一つの魅力は,上記のような夢のある話とは一見裏腹の,徹底的な実用主義です.そこらのホームセンターで買える塩ビパイプや継ぎ手等を駆使して自作の井戸掘り道具を作る手順を,これ以上ないくらい詳細かつ丁寧に写真つきで解説してくれます(さらには,できあがった道具を安価に販売してくれます).そういう「実用」面での配慮にはまったく手抜きがありません.
また,筆者がつくった井戸掘りメーリングリストの議論などから,各地の自力井戸掘り体験談を豊富に紹介しているため,さまざまな地下地質条件・水質条件での実例を知ることができます.
★を一つ減じているのは,地域の水環境・水循環に関する配慮が十分とはいえない箇所があることです.これは場所によっては大きな問題となりえますが,やや軽視されている面は否めません.その点は井戸を掘る一人一人の責任でもありますが,言及のしかたがやや軽いかと思いました.