新興レーベルのSHOWBOATからの第一作は、20歳の新進女性SSWのデヴュー盤であった。発売日が73年9月21日というのは『はっぴいえんど』解散コンサートと同日である。
演奏はキャラメル・ママ(細野晴臣B、鈴木茂G、林立夫Dr、松任谷正隆Key)、プロデュースは細野晴臣、吉田美奈子、吉野金次。全ての曲が吉田自身の作品で占められ、また全てのピアノも吉田がプレイしている。
ローラ・ニーロのファーストが薔薇ならば、吉田美奈子はユリ科であろう。ヤマユリのような荘厳さとユーチャリスの気品、清らかな心といったイメージ。このアルバムは日本の『The First Song』である。
そう感じさせるのは2『待ちぼうけ』
ややジャジーな雰囲気を湛えるこの曲はローラ・ニーロのファンに是非聴かせて見たい曲である。4『ねこ』、6『変奏』もローラの雰囲気を漂わせる歌唱とピアノ。
タイトル曲の3『扉の冬』の美しさにはためいきが出るばかりだ。
ジャケット写真のどこか悲しみを湛えたような雰囲気と、この曲の持つ暗さがこのアルバムのイメージを作っている。
1『外はみんな』はブラス全開の明るめな曲なのだが、歌詞が難解で暗い。8『ひるさがり』も孤独な少女の内面を描いた曲であり、暗い。
吉田の高音に伸びがある素直な歌唱法には素晴らしいものがあり、キャラメル・ママの派手さはないが手堅い演奏はウエストコーストのSSWアルバムのバッキングのようだ。
当時、最先端を走っていたであろうこの演奏は、荒井由美のファースト『ひこうき雲』にも見られたものだ。
このアルバムの発売後わずか2ヶ月でデヴューした荒井由美は、4畳半フォーク全盛の時代に一石を投じ、しばらくしてスターダムを駆け上っていく。
明暗を分けたのは文字通り明るさと暗さのような気がしてならない。
しかし、このアルバムでの吉田美奈子のパフォーマンスは最高であり、その完成度において日本音楽史に残る傑作である事は間違いない。
7『かびん』は個人的にベストトラックだと思っている。
当時最先端だったそのサウンドは35年経過した今も全く色褪せてはいない。
ああ。
素晴らしすぎる。