評価がどうも芳しくないですが、著名なお二人の対談。
たしかに、同じNHKブックスの対談、鼎談では、東浩紀・大澤真幸『自由を考える』のところどころ目から鱗が落ちるような刺激的な対談や、宮台真司他『幸福論』のように煮詰まった議論というわけではないが、ドラスティックな改革を予感させる試行錯誤をしていて、なかなか興味深い内容になっているように思う。
立岩は極めてストレートな論理である種の理想を表明し、それに対して稲葉が広範な知識でもって精緻化や批判を加えていくといったかたちになっている。ただし、編集がいまいちなのか、どうもすんなり読み進めることができず、ややストレスを感じる。これが低評価の原因であれば納得という感もある。ただ、立岩の別な書物を読むと、立岩の言葉づかい自体が読者を選ぶようで、私も苦手であり、この書物が読みづらいのもそのせいかもしれない。
出版されてから時間が経っているのもあってか、それほど目新しいと感じる話は出てこなかったが、所有の自明性を疑うこと(私は左翼リバタリアンに近いので、労働所有権ではなく、自己所有権の絶対性をむやみに解体するような議論までは感度がほとんどないが)、市場経済の初期条件をどこに置くかに敏感であること、一国での改善には限界があること、搾取という概念に対する信頼性などなど、自分でも普段から考えていることに色々と触れられていて、すんなり腑に落ちる話が多かった。
特に興味深かったのは、最後のほうで不平等の責任を問うことの困難について論じられている箇所であり、たとえば、盛山和夫は『リベラリズムとは何か』(勁草書房)で、こうした責任論を一刀両断していたが、それをも上回ろうとする野心的な議論を展開している。それが成功しているか、あるいはするのかは定かではないが、主張自体は一考に値すると思われる。