戦前の作品なので、画面や音質には戦後のものとは同じとはいかないし、時間の経過とともに、体感時間が現代人と差があるせいか、やや展開が遅い気がするなど、要するに戦後の小津作品を見慣れて、この作品に接すると、違和感が生まれることはいなめない。でも、テーマは家族の中のエゴと愛情を上手に見つめる視線で、「傑作」の名に値すると思う。兄弟が多いなど今とは家族構成が異なる上流の家庭のお話なので設定が一般的ではないが普遍的なテーマを上手に描いている。「東京物語」にも顔を出すが、同じ子どもでも、それぞれ事情があって、疎遠になって冷たくなってしまう人と、やっぱり本来の親子の感情を慈しんで温かい対応を取る者と、上手に描かれていたと思う。戦前の大きな家の日常生活や物腰態度がどんなだったかも想像できる、今となっては貴重な資料。自分の祖父母が、若かったころはああだったのか、と自身の知っている祖父母の面影とこの映画の描いた時代を思い比べて、時代を推し量るのも楽しかった。それはそうと、この作品では最後に佐分利信の演ずる頼りがいのある息子が、嫁になるであろう人と母親や妹を連れて満州に戻るかのような話になって終わっているが、「現実」の世界は、その数年後にどえらいことになっているわけで、お話の中の出来事とはいえ、知らぬのは怖いというか、制作時の日本人の夢想だにしていない感覚が、悲しい気もした。作品を見るといろんなことを思えてくる。