武内涼の2作目が発売されていたのを知って、早速購入。デビュー作「忍びの森」で、注目していたが、この作品も期待を裏切らない。戦国の世、陰陽師の姫「光子」が、魔界の妖しによって破壊されようとしている都を救うため、妖しを封印できる霊剣を求め、忍びを護衛とし、京都から出雲への旅に出る。物語は、京都から出雲、出雲から京都へと数々のエピソードを織り交ぜながら、ハイテンポに進行していく。それにしても、30代前半の若さで、まず、これだけ多彩な登場人物を駆使し、とてつもなく魅力的な物語を、緻密な時代考証を加えながら、描き切る作者の力量に驚嘆する。そして、この作品からは、場面、場面ごとに、鮮やかな色を、感じる。舞台となる山陰道の雪の「白」、霊剣の場を示唆する紫雲の「紫」、敵軍や妖しとの激しい戦いの中に炸裂する炎の「赤」、束の間の憩いの中で光る満点の星空の「金」、美しい自然を形成する草木、樹木の「緑」、不安や混乱を暗示するように、都の辻々に漂う塵やほこりの「灰色」等々である。また、権力によって、庶民を蹂躙し、時代を生きようとする支配者への作者の怒りが、物語の展開の中から、伝わってくる。読後感は、まさに、鮮烈であった。この作者が、ホラーという枠から飛び出したとき、どんな歴史、時代小説が誕生するか、大いなる期待を持って、楽しみにしているのは、私だけだろうか。