小学館の貸本復刻シリーズが、限定版BOXに切り替わっての第3弾。これはコアなファンでないと手が出にくいかもしれない。しかも値段は過去最高値の8925円。もちろん、私たち水木ファンにとっては、3冊であることや単行本形式で忠実に復刻されていることからすると、垂涎の企画である。今までには、確か豆本の形で復刻されたことがあるはずだ。
その他「台風爆弾」は宙出版の戦記選集「大空戦」に、「印度洋作戦」は同じく宙出版の「ああ太平洋・上」に収録されているので、作品自体はそちらでも読むことが出来る。
3作品とも、生々しい戦争体験をベースにしながらもフィクション性が強い。絵はまだ初期の水木作品であり、独特の画風とはほど遠く、あまり個性的ではない。だが絵は上手い。
「印度洋作戦」では日米エースパイロットの対決を軸にしながら、敵パイロットの無念を思いうつむく主人公の顔が印象的だ。
「台風爆弾」では、日本軍最後の秘密兵器・台風爆弾という大仕掛けもあるが、米ライバル兵との死闘の末、結局彼にとどめをさせない一連のシーンが何とも強烈に悲しい。
中でも「必勝雷撃隊」はものすごいストーリーだ。日本軍の秘密ジェット飛行機「神雷」なんてのが登場する!しかもそのパイロットは意外な人物。若き主人公はガダルカナル島で孤立する日本軍を解放するため、なんと独自判断で降参の白旗を掲げて飛行機を操る。この皇軍に対する反逆行為を阻止するため、「神雷」には主人公の機を撃墜せよとの命令が下る。最後の2ページでつぶやかれる「生まれてこなければ良かった」…この血を吐くようなセリフを、ぜひ読んで欲しい。水木らしい奇想天外なオリジナル・ストーリーの名作である。