戦艦大和は史実における最大の戦艦であり、戦局と作戦指導によって戦艦同士の戦いを経験せずに沈んだ悲劇の戦艦である。それだけに、様々な仮想戦記において様々な姿で登場し、様々な活躍を見せるわけだが、本書の大和はその中でも一際凶悪な能力を作中で存分に振るう、戦艦好きのための一冊である。
日米英vs独・伊ソ仏(属国扱い)という図式の中で、大損害を受けた大和は米本国で日米の技術者によって徹底した改装を受けて弱点を潰し、地中海、そして北海で欧州戦艦達を相手に存分の活躍を見せる。
特筆すべきは、本書に登場する戦艦達のディテールであろう。
ドイツに拿捕されて改装されたキングジョージ五世級、リシュリュー級、リットリオ級、ビスマルク級、そして史実では未成艦であるH級やソビエツキー・ソユーズ級までが登場し、それぞれの能力や弱点が砲戦の描写と共に描かれる。遠距離砲戦、近距離砲戦の砲弾の打撃傾向、SHSの甲板打撃能力などについての解説と砲戦の描写が戦艦同士の戦いを盛り上げる。
何よりも、ここまでやるか、と思わせる改装を受けた日米合作の大和の改装と能力が凄まじい。断面図付きで示された大和の改装(注排水能力、電装系の強化をはじめ、四七口径四六センチ砲とSHSの組み合わせ、そしてさらに……)と活躍、前述の各国戦艦はまさにそれを引き立てるための端役にすら思えるその凄みが本作の最大の魅力であろう。
もちろん、敵方であるドイツの史実よりの強化のプロセスなど首を傾げる部分もあるが、それを差し引いても戦艦好きには楽しめる一冊であろう。今後の作品が楽しみな作家である。