過去には早乙女勝元や山中垣らによる銃後を描いた本を世に送り出してきた岩波新書だが、本書もまた、これまでの名著に引けを取らぬ力作である。大和誕生から沈没までの戦歴のみならず、大和乗組員達の艦上や停泊地での暮らしぶり、悲惨な戦場の様相が、生還者たちの証言によって再現されている。生存者達の戦後、そして遺族の戦後もフォローされており、衝撃的だ。数多くの生存者・遺族への取材によって真摯に「証言」を汲み取る作業をされた著者の仕事には敬意を表したい。
「大和は、見る者の歴史観を映す鏡である。」(P213)
日本の科学技術の結晶であり、戦後の造船業界の興隆の基盤となった大和。愛する郷土や家族を守るために死地に赴いた兵士達の象徴としての大和。天皇の「お言葉」を契機に、慌しくろくな準備もないままに「思いつき」でなされた拙劣な特攻作戦に投じられた大和。
一方では戦没者の死に意味づけを求める遺族がいる。しかし、他方で、大和を「美化」することには反対する遺族もいる。前者の感情にも大いに共感する。しかしながら同時に、「強制された特攻」によって、家族を残しての不本意な死を迫られた彼らに、「郷土と愛する者を守るために闘った」とする美談調の意味づけを与えるのは、やはりなにか大事なことを捨象しているように思われてならない。
大和の経験を、そしてあの戦争の経験をどのように記憶していけばいいのだろうか?映画にミュージアムと「大和ブーム」が沸く今日にあって本書からはそんなことを考えさせられた。