本書曰く「巷の戦略に関する書籍は、実務に使うにはかなりの距離がある。(また)コンサルタントが書いた書籍は内容的にはもっともらしいが、ほとんどが本人の経験に基づくものであり、どれだけ汎用性があるのか疑わしい」と。一読して、本書はこのような類書への不満に対する福音の書たりえると思った。その理由のひとつは、本書の内容が「経営企画の担当者でも、経営コンサルタントでもなく、事業責任者の立場」で書かれていること(ちなみに経営企画担当者は得てして売上あるいは利益の「責任」を負わない。事業責任者はその責任を負う。これは大きなスタンスの違いである)、そしてもうひとつの理由は、本書で取り扱う理論やフレームワークはいずれも「研究者による実証的な裏付けがあること、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス誌にとりあげられていること、ベストプラクティスとしてとりあげてられていること」という基準で採用されていることである。参考資料リストをみると経営戦略の泰斗とされるM・E・ポーターはもとより、日本でも加護野忠男など通説的なオーソリティのセオリーを踏まえたものであり、奇をてらったものはない。まさに本書にいう「戦略定石」といいえよう。また、バイブルというからには、1000ページを超える書籍をイメージされる向きもあるかもしれないが、ページ数は300ページに足りない。しかし、その内容は一行一行凝縮されたものであり、また、繰返し読むことにより、新たな発見があるという意味でバイブルの名に恥じないものと思う。ビジネス経験が豊富であればあるほどほど、本書の真の価値が理解できるのではないか。いずれ事業責任者あるいは経営幹部の座右に置いておくべき一書と考える。この価格でこの内容は「買い」である。