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「戦略」という言葉で通常想起される、企業戦略に関する記述は一切ない。また、「ゲーム理論」の骨格である「囚人のジレンマ」「男女の争い」などのフレームワークに関する記述も一切ない。
一方、情報経済学の概念であるシグナリングや逆選択については、分かりやすく、また、豊富な事例をもって解説されている。こういった概念に関してはじめてふれる方にとっては、普段、あまり意識していない行動や現象が理論的に解説されるのは新鮮であり、興味深いであろう。
情報経済学では、良い入門書は少ない(ない?)から、流行に迎合するのではなく、堂々と、「情報経済学入門」という書名で売り出してもらいたかったと思う。
ただ、情報経済学は、新しい分野であるだけに、過去のことを説明するのに、きれいにはまる理論的美しさは持つものの、自らの将来の行動に関する知見を提供してくれるかというと、そこまでの成熟感はないと思う。「シグナリングの観点からは、女性におだてられて、食事代をおごる男性は、戦略的思考ができていない」(P144)といわれても、実感はないであろう。
つまりは、ちょっと知的な読み物として、暇を持て余しながら読むための本として位置付けるといいのではないかと思う。なお、ミクロ経済学の応用分野に属するとはいえ、この本を読むのに、ミクロ経済学の知識はまったく必要ない。分かりやすく書かれている点は評価できる。
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