七種族の公会議の崩壊を目指し戦略家ケロスカーが立案した欺瞞作戦‘八十年計画’のスリリングな危うい序盤戦を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第377巻。本巻の執筆者は硬軟の魅力を併せ持つ物語巧者ヴルチェクとエーヴェルスです。アフィリー・サイクルが始まって暫くは厳しい緊張の連続の物語が続きましたが、最近ようやくユーモアとシリアスのバランスが絶妙な以前のローダンが復活したと感じられ嬉しく思います。
『戦略家ケロスカー』エルンスト・ヴルチェク著:ケロスカーの計画に必要不可欠なウルトラ戦艦の入手をアトランに阻まれたローダンはポスビにフラグメント船の提供と協力を求める。本編では今やすっかり主役を食う勢いのポスビ研究家の超変人ガルトが奔走し大活躍します。それにしても表紙絵に描かれるけったいなおっさんに惚れる物好きな女がいるなんて全く信じられません。『ロルフスの幕間劇』H.G.エーヴェルス著:八十年計画に基づきラール人と接触した26体のケロスカーは氷惑星ロルフスに連れて来られる。ローダンは作戦の状況を確認すべく宇宙漫才師コンビのロルヴィクとタッチャーに彼らの行方を追わせる。本編では不吉な搭載艇の船名「ゴースト」で出動し染みで汚れた宇宙地図のお陰で目的地に辿り着くというすっ呆けた展開が如何にも二人らしいです。タッチャーが冗談のつもりでコーヒーに幻覚剤を入れた為にロルヴィクが幻影になる騒動を含め、偶然の悪戯が災いして計画の危機を招き慌てたドタバタ劇となるねじれた趣向が全編に溢れています。
本巻の翻訳者、嶋田洋一氏のあとがきは今流行りのtwitterの魅力について体験を踏まえ詳細に語られています。ローダンへの深い友情から上長アトランに逆らって協力する旧ミュータントのタコや故郷を探す時間ミュータントのラクトン人パンの再登場と千両役者を見事に使いこなす匠の技に次巻も期待しましょう。