次のような特色を持ち、ぜひ持っていたい本。
ゲーム論の本は普通、ゲームの類型と例題そしてゲームの解の計算という
順序で形式的に整然と書かれているものが多い。
本書は、これに対し、フォン・ノイマン=モルゲンシュテルンに始まるゲー
ム論の歴史を踏まえ、ナッシュから現代に至る大切な理論を一つ残らず取り
上げて、ゲーム論の基本構造をゼロ和2人ゲームとナッシュ均衡を中心に
わかりやすく解説する。
後半では、この基礎知識を踏まえて、ゼロ和2人の協力ゲームからナッシュ
の非協力ゲームへの発展関係、ナッシュ均衡の複数存在のもつ問題、真の
ナッシュ均衡の探索が新しい理論に基づいて考察される。
この部分は、著者によれば本邦初演の内容をもつ意欲的のものである。福山
雅治流にいえば宇宙初のライブ実況ですね。
最後の箇所にゲーム論の発展のもたらした他分野への学問的な影響が、特に
統計学を取り上げて考察されている。
もう少し詳しく書くと、
1章から3章の前半では、ノイマン達の古典的な例を用いて、協力ゲーム、
非協力ゲーム、またそれらを構成する効用、選択、期待確率などの基礎概念が、
また、数学的な鞍点定理、ナッシュ均衡と不動点定理が、歴史的=概念的に
解説される。また3章で、展開型ゲームが実にわかりやすく解説されているのが
特徴である。
4章から6章は後半部分であり、4章は「協力・非協力ゲームの統合」のタ
イトルで、協力ゲームに欠けている「交渉プロセス」を明示し、協力ゲームの
均衡が非協力ゲームのそれと同じになることが示される。
展開型ゲームがその説明に用いられる。
5章では複数のナッシュ均衡から、逐次消去法などによって、真のナッシュ
均衡を探索する方法が述べられる。
最後に統計的推定が、ゲーム論の枠組みに乗せられ、自然と統計家のゲーム
として解説される。
本書の特徴は、
目次からわかるように本書は、相当にハイブラウなゲーム理論であるが、
面倒な数式は使わずに、マトリックス表と展開図(樹木図)だけを使い、
また算術だけを用いて、きわめて周到でわかりやすく解説されている。
(5章のグローバルゲームの解き方などがその例)
そういうわけで、いまゲーム論を勉強している人には、基礎知識の新しい
視点からの確認になるし、また普通の教科書に載ってない新しい解釈に
出会うことができる。
学生諸君のはじめての入門にも最適だし、当方シニアの趣味の読書にも
ベストである。
また、全6章のどこから読んでもよいし、なんだか座右においておいて
いつでも読みたい本である。
ああ!すこし長く書きすぎたようだ。