故ピーター・F・ドラッカーは言わずと知れた“マネジメントの権威”だが、当書の序辞の中で、彼は「本書は、効果的な活動を行うための戦略の活用に焦点をあてた唯一の書といえる」(本書の刊行に寄せて)と述べている。この訳書は04年に発刊され、その後も様々な「経営戦略」を論じた書物が世に出ているけれども、「成功をもたらす戦略」ではなく、「戦略の立案プロセス」(原著まえがき)をフォーカスしている本書は、依然としてドラッカーの巻首における賛辞に負けない内容を読み手に伝えてくれていると考える。
というのも、今、知人の“起業”を側面から支援している関係で、本書を再び紐解いてみたわけだが、訳者がいみじくも語るごとく、「本書の特徴と魅力は、手本や解答を提示するのではなく、『そのときの状況で最適かつ最も効果的な戦略とは何か』という問題に対して意思決定ができるように、戦略立案プロセスで『問わなければならない適切な質問とは何か』を明確にしている点にある」(訳者あとがき)ということだ。実に、正鵠を得た本書の評価だし、私自身のバイアス補正とノイズ除去にも大変役立つ文献である。
ドラッカーは前出の序言において、「『戦略とは何か』『なぜ戦略が重要なのか』を問うているのは私の知るかぎり本書だけであり、『特定の業界において戦略はどの程度まで、またどのように管理されるべきか』を問うているのもまた、本書をおいてほかにない」と叙しているのだが、「問わなければならない適切な質問」を指し示してくれるのがこの書物である。そして何より、「持続的競争優位性を達成するためのポジショニングを構築できる意思決定を行う『羅針盤』」(前掲訳者)としての役割を十分果たしてくれるだろう。