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戦時期日本の精神史―1931‐1945年 (岩波現代文庫)
 
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戦時期日本の精神史―1931‐1945年 (岩波現代文庫) [文庫]

鶴見 俊輔
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

カナダの大学で学生に向け語られた,広い視野からの現代日本思想史前篇.ファシズム支配下の日本知識人の軌跡を通して「転向」の事実と意味を問い直し,それが日本の精神史を貫く「文化の鎖国性」という特質と通底することを明らかにする.知識と思想のあり方に反省を迫る独自の日本文化論でもある.

内容(「BOOK」データベースより)

カナダの大学で学生に向け語られた、広い視野からの現代日本思想史前篇。ファシズム支配下の日本知識人の軌跡を通して「転向」の事実と意味を問い直し、それが日本の精神史を貫く「文化の鎖国性」という特質と通底することを明らかにする。知識と思想のあり方に反省を迫る独自の日本文化論でもある。

登録情報

  • 文庫: 296ページ
  • 出版社: 岩波書店 (2001/4/16)
  • ISBN-10: 4006000502
  • ISBN-13: 978-4006000509
  • 発売日: 2001/4/16
  • 商品の寸法: 14.8 x 10.6 x 1.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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17 人中、14人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
とてもコンパクトな本でありながら、扱う内容は「鎖国」「国体」「大アジア」「玉砕の思想」「原爆」などと多岐にわたる。語り口調の文章は平易であるが、しかし沢山の人物や文献を扱うことによる視野の広さや柔軟性により、そこいらの教科書的戦争の歴史本とは一線を画す。

そのなかで一番の注目はやはり「転向」「非転向」の章であろう。佐野学のように反国体団体の指導者でありながら戦争反対の立場を翻して戦争協力の意思表示をした者、宗教者である明石順三のように獄中に入れられようが意思を曲げずに戦争反対を貫いた者。その当時の社会的背景や彼らの生い立ちを重ねて捉えると、それら正反対の行動から一体何を学び、得とくすることができるのか。

転向現象をただの「裏切りによる悪」とするのではなく、

「まちがいのなかに含まれている真実のほうが、真実のなかに含まれている真実よりわれわれにとって大切だと考える」

この文章は頭にとどめておくべき名文であろう。
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2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By cobo
形式:文庫
いわゆる戦時期(満州事変からポツダム宣言受諾による敗戦まで)における精神史を『転向』というキーワードで広く、そして深く、そして俯瞰させた上に立たせてくれる書物です。カナダでの大学生を相手に英語で講義した内容を日本語に翻訳したものだそうです。鶴見さんという方の特殊な環境の方の、とても広くて、とても深くて、様々な物事を受け入れつつ判断された内容を解りやすく、その上調べることが出来るような注釈をつけたものです。

「転向」という言葉の持つ「裏切る」というかのようなイメージを持ちやすいことではありますが、そこをきちんと定義付けるところから始まるのがまた親切ですし、「転向」したことに見せかける、あるいは教義に殉ずるのではなく、あえて変わったとしてもそのことで生きて後を考える方々がいた、もしくはそういう考え方そのものを当然ながら認めるという、単純に割り切れる話しではないことへのアプローチの仕方が私個人にはとても面白く、深く感じました。鶴見さんの言う『まちがいの中に含まれている真実のほうが、真実の中に含まれている真実よりわれわれにとって大切だと考えるからなのです。』という言葉を私も同じように感じます。その後さらに自身への問いかけとして、『長い人生を生きて転向を通り抜けないものがあるだろうか?彼らの転向を彼らはどのように正当化したのだろうか?戦争を通り抜けたあとで、転向を振り返ったときに彼らはどのように考えただろうか?』というのがこの本のテーマだと思います。「転向」の定義付けには本書を読んでいただくのが最も理解できることだと思いますが、スリリングな考えることの話しです。また、いわゆる『鎖国性』という文化についての考察も鋭くその辺りもとても面白かったです。

転向を定義付け、鎖国というものの及ぼした文化の波及を述べ、「国体」というものの捉え方(吉田寅次郎と山県大華の論争から伊藤博文と金子堅太郎の論争)を考え、そこから国家という密教の仕組みと2重構造を経て、さらに「大アジア」ということをまとめてから、いわゆる転向について語られていきます。ひとつひとつの話しがとても詳しく、そしてなるほど、と納得させられます。随所に出てくる様々な人々の掬い取り方がとてもきめ細かく、そして左右の区別もなく、とても自然で暖かく掬い取りつつも、とても冷静なのです。広い視野で、触りに紹介する人、物、事を(注釈で解説してあるにしても!)読み込み、理解するのに恐らくとても時間がかかったと思いますが、その理解の上に独自の解釈を重ねてテーマに沿ってまとめるという形の凄さと、その凄さを感じさせつつも非常に読ませるチカラもある文章でした。もちろん全てを理解出来た訳ではありませんが、とても面白かったです。

中村重治と東大新人会の葛藤と転向の話し、遠藤周作さんの「沈黙」にも繋がるような明治維新後の五島列島とかくれキリシタンの話し、また明石順三というキリスト教一派の信仰の顛末、吉本隆明や埴谷雄高の立ち位置、山川均という人物の覚悟、大河内一男の立場、いち通訳であったはずの男菅季治に背負わされる重み、イギリスと日本の配給性の合理の有無の差、九津見房子の弾力ある転向、E・H・ノーマンの悲劇、そしてリリアン・ヘルマンのいう「大きな代償を払ってひそやかなものを獲得した。それはほかにいい言い方がないので、まともであること」のまともであることの意味と重さ、様々な知らなかったことを知ることが出来ました。

戦後を考える上でも、そしてスリリングな思考の積み重ねを、知らないよりも知ることの意味を見出せる方には強く、オススメ致します。
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18 人中、13人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 この本は著者が1979年から80年まで、カナダのマッギル大学での講義の英文ノートを日本語になおしてテープに吹き込んだものだ。いうなれば、英語文化圏でも通用する天皇制論ともいえる。
 私が小学生のころ、多くの日の丸の旗に送られて出発する神風特攻隊のニュース映像を何度か見た記憶がある。特攻隊員は日本を守るヒーローとして飛びだっていった。それは異常な光景ではなく、スポーツ選手をオリンピックにおくりだす心情のように当時の私は受けとった。だからといって、戦後生れの私にとって、「天皇陛下のために一命を捧げる」という心情は、すんなり理解できない。天皇制および国家神道は、戦後生れの私たちにとって理解しにくいものとして存在する。この本は外側からの視点を入れることによって、別の角度から天皇制像を照らしてくれた。
 高級官僚の派遣団(1871年岩倉具視、大久保利通ら106人)は西洋諸国の技術の発達とその能率から深い印象を受けます。彼らはまたその能率のある統治知識を推し進める宗教および倫理の信条をもうらやましいものと感じました。このゆえに彼らは能率の高い技術文明を支える力として、日本の神道の伝統を模様替えして取り入れる流儀を採用しようと考えました。こうして天皇崇拝は、日本においてそして日本だけに栄えるものになる技術文明の殿堂の思想的土台として据えられることになりました。(略)
 神道は西洋諸国におけるキリスト教にきわめてちかい役割を与えられてり、その結果色濃く一神教としての性格をもたされています。こうしてここに過ちを犯すことのない天皇という絵姿が現れました。(略)善悪の判断の基準は、天皇に発表される勅語に基づくことになりました。
 著者は15歳から19歳の終わり近くまで、米国で過ごした。そこで日米開戦に逢い、捕虜収容所をへて交換船で日本にもどった時は20歳になっていたという経歴を持つ。私が鶴見俊輔に魅力を感じるのは、こうした挫折経験によるものからかもしれない。
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