非常にバランスが取れた本。
もちろん、戦後責任をめぐる日本の姿勢に批判を
展開しているというところに結論があるという時点で、
ある種の色がついた書であることは論を待たない。
だが、それでいてこの書が均整を保ちえているという
所以はやはり、異質なるものに対して、真摯且つ紳士的
に向き合っているという点にある。
他者を攻撃するという視点に立つのではなく、あくまでも
正当なる言論という手段を持ってして、且つ倫理的に応答
するという知識人が持ちえるべきマナーを兼ね備えている
時点で品があるといえるのだ。
保守的な論調に良く見られるような、他者への寛容を欠いた
排撃的且つ侮蔑的な論考は、本編を通して一片も見られない。
それは、対象がどういうものに対してであれ、一貫していえ
ることである。
こういった姿勢が良識派と目される所以なのであろう。
それはひとえに戦後責任=他者への応答可能性としての責任
と考えている思慮深い温厚な精神から発せられるものである
ようにも思われる。
と同時に、筆者が哲学者であり、倫理的な観点で論理を持っ
てしてものごと考えるということも関係しているのかもしれない。
いずれにせよ、寛容の上に成り立つ愛国といったものこそ
が現代日本において真に求められる態度である故、日本を本当に
愛するものこそがこういった書を読み、戦後責任に真摯に向き合う
必要があるように感じられる。