1959年に出版されたという、出版当時の「思想地図」を示した著作。三人の発言者/執筆者のうち鶴見俊輔氏しかその著書に触れたことは無かったが、読む前に想定していたよりよっぽど面白い内容だった。
というのも、当時の日本の言説の場における、発想の仕方のヴァリエーションを出来うる限り俎上にのせて、それぞれの考え方の強み・弱みや各思想の個人・社会・国家・世界との関わり方を分析し、討議していく内容が、単にその論鋒を辿るだけでも面白いし、語られている内容を今の状況に敷衍して考えていくと一々うなずけるし、何よりいわゆる大文字の「思想」だけでなく、大衆の気分や農本主義的な実感、技術主義的なモラールなども視野に入っているので、イデオロギー論のよろずや的な面もあり、色々と納得できるところがある。
加えて、今の時代と比べると論者の語り口がいいのも魅力的だ。最近ありがちな、自分は全ての答えを知っています的なものの言いくるめ方でなく、答えを求めようとする語り方なのが、読んでいて気持ちいい。何事かを断言していても「お前の価値判断なんて信じないよ」と言ってしまいたくなる論者が多い中で、この著作中、自分の考えることに筋道を立てて発言した上で、その発言を忘れずに引き受けて考え続けること、その言葉を生きること、それをあたためて再び言葉にしていくことで責任を取ろうとする思想家の道を構想しているのが印象に残った。
岩波現代文庫になっているようなので、そちらもみてみたい気がする。意外と現在との共通点を見つけられる一冊だと思う。