著者は、外交官から学界へと転じ、活動地域は、日本から世界に亘っている方です。
そうした長年の経験による豊富な実例に裏打ちされた考え方が、本書の骨組みになっていると思いました。
前半は、「景観」を中心にした日本の現状への怒りがテーマで、共感する方も多いでしょう。
私も時々ヨーロッパに行きますが、帰ってしばらくの間、日本はどうしてこんなに醜いのかと思います。
そのうち、生活の便利さと日々の忙しさにかまけ、忘れがちになりますが、この本は、執拗に、その風景の喪失感を掘り下げています。
後半は、なぜそうなったのかについて。とりあげている問題は、ナショナリズム、皇室、弱者、哲学、教育、グローバリゼーション等々幅広く、
それぞれユニークな視点がありますが、要は、戦後民主私議で個人の権利を尊重しすぎた、「公」をとりもどせと主張されているようです。
これからの日本について、ゆきついた結論は、「開かれた江戸」というメッセージです。
藤原正彦先生が、文藝春秋に最近書かれた「日本国民に告ぐ」にも同じ考えが記されていたような気がします。
ただ、あえて言えば、もっと具体的な解決策・提案を求めたい、とも思ったのですが、その答えを、読者、というか、
国民に求めている、国民にボールを投げかける、というのが著者の姿勢なのだろうな、と推察しました。
とにかく、爽やかで重厚な読後感ででした。