昭和史・医学関係の多くの著書を持つ1939年生まれのノンフィクション作家が、2005年に刊行した新書本。私はあまりこの著者に良いイメージはもっていないが、本書の基本的な立場には共感できるところが多かった(特に、オモテの言論とウラの言論に関する考察と、前者への著者の共感、市民的自覚の必要という指摘に)。ただし、第一に著者の言う暴言・失言の6つ(後に7つに変化)のパターンという区分(区分の規準は明確か?)は、分析の道具としてどれだけ有効か疑問である。第二に、1970年頃を目安に戦後日本政治家の暴言・失言を二つの時期に区分しているが、前者が戦前の官僚体質の残存として特徴づけられているのに対し、後者の特徴づけが不明瞭である。第三に、個別の社会背景については指摘されるが、戦後日本全体の流れをあまり見ていない感がある。従って、基本的には戦前対戦後という分析枠組みである。小泉政権を支えるアパシーについても、その背景の分析は、正しいにせよいまいちである。したがって、本書の全体の流れ自体はあまり面白くは無いが、戦後日本の政治家(主として自民党)の主な暴言・失言の一覧が得られる点、特に小泉首相の資質が問われるような確信犯的な暴言が再確認できる点はお薦め。
小泉首相は前首相不信任案却下の後に選出され、当初よりイメージ先行の大人気がありながら、結局はつぶれかかった古い自民党をつぶす方よりは選挙で支える方にそれを活用し、郵政民営化以外の公約もきちんと実現しないままである。その上、本書で見られるような暴言まで行ない、議論をきちんとしないことの問題性は、正面から論じられてしかるべきだろう。