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戦後占領期短篇小説コレクション 3 1948年 (3)
 
 

戦後占領期短篇小説コレクション 3 1948年 (3) [単行本]

尾崎 一雄 , 網野 菊 , 武田 泰淳 , 佐多 稲子 , 太宰 治 , 中山 義秀 , 内田 百 , 林 芙美子 , 石坂 洋次郎 , 紅野 謙介 , 川崎 賢子 , 寺田 博
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

"1948年、 文学と占領 "

【一国主義に閉ざされた文学】

 1948年、GHQによるメディア検閲は、事前検閲からほぼ事後検閲へと移行し、検閲の方針も転換しつつあった。
 1945年9月より開始したGHQによる検閲の流れは、棒ゲラに組んだ原稿を二部、CCD(民間検閲部)の所定のPPB(新聞・映画・放送部門)当局にさしだし、問題が無いか、あるいは一部削除、公表禁止などの指示を仰ぐというものだった。削除にあった場合には、誌面に空白、伏せ字などの検閲の証拠を見せない形に修正し、再提出することが義務づけられた。新聞・雑誌刊行まえの検閲すなわち事前検閲である。検閲される側には、削除、公表禁止などにあった場合に経済的な被害が生じる。検閲する側には、円滑な占領統治に必要な情報の統制、占領軍批判の抑制と、情報収集という利点があった。
 検閲方針の転換には、国際関係の変化が影を落としている。敗戦直後には、戦争協力メディアに厳格に対処したが、連合軍内での米ソ対立および戦後の世界分割をにらんで、日本を西側に編入すべく、左翼の言説にたいする検閲が厳しくなる。この年、ドイツの東西分割はベルリン封鎖にいたり、イスラエル独立宣言と第一次中東戦争、8月に大韓民国樹立、大統領に李承晩就任、9月には朝鮮民主主義人民共和国が樹立、金日成が首相に就任した。中国共産党軍は、北京に無血入城する。東アジアの緊張は高まっていた。
 いっぽうで外国雑誌の配給自由化がようやくGHQによって許可された。日本が国際ペンクラブに復帰した年でもある。占領、あるいは引揚げといった大規模な越境、移動のかげで、敗戦後の状況は、文芸の翻訳、国際交流に制限を加え、日本文学を一国主義の文学史空間のなかに閉ざされたものにしていたのだ。

【太宰治の「あほらしい感じ」】

 戦場の死は遠ざかりつつあったといえるのだろうか。1948年の読書界を震撼させた最大の事件は、太宰治の情死である。6月の玉川上水に、太宰は山崎富栄と入水した。姿を消してから遺体があがるまで新聞報道は過熱するいっぽうであり、死にいたる経緯、行為の是非、太宰の文業の評価は、やがて雑誌に場を移して語り継がれた。専業の文学者だけではなく、官民問わずさまざまな職場の雑誌、地方誌や同人誌個人誌につどう素朴な書き手のあいだでも、太宰治の死と文学は議論の的となった。
 本書には「家庭の幸福は諸悪の本」の警句で知られる「家庭の幸福」を収録する。「子供より親が大事、と思いたい」(「桜桃」)、「恥の多い生涯を送って来ました」(「人間失格」)など、規範からの脱落をことさら露悪的に語る太宰文学の魔に憑かれた読者も多かった。かつては太宰文学における政治性といえば、戦前の左翼運動との関係と挫折に焦点が当てられたものだが、占領期という視角から再読して興味深いのは「苦悩の年鑑」、「トカトントン」など、戦時イデオロギーにも占領期のイデオロギーにたいしても、ひとしくむなしさを表明する言説だろう。「時代は少しも変らないと思う。一種の、あほらしい感じである。こんなのを、馬の背中に狐が乗ってるみたいと言うのではなかろうか」(「苦悩の年鑑」冒頭)という姿勢である。その「あほらしい感じ」にはかろうじて持続的な批評の力がある。(後略)

(川崎賢子 かわさき・けんこ/文芸評論家)

内容(「BOOK」データベースより)

“戦後文学”を問い直す、画期的シリーズ。本書にとりあげた1948年の作品群は、戦争とGHQ占領の意味を問いつつも、いずれもどこかに時代に押し流されずに自立したところがある。

登録情報

  • 単行本: 305ページ
  • 出版社: 藤原書店 (2007/8/16)
  • ISBN-10: 4894345870
  • ISBN-13: 978-4894345874
  • 発売日: 2007/8/16
  • 商品の寸法: 19.2 x 13 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 5.0  レビューをすべて見る (1 カスタマーレビュー)
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なるほど、こんな方法があったんだ、と私を唸らせた斬新なアンソロジーです。

1945年の敗戦から1952年の講和条約までのアメリカ軍占領期に、やっと自由になったと思ったのも束の間、戦争中の軍の検閲に替わって今度はGHQによって新たな厳しい制約の中で、作家たちはどう苦闘したのか。何を見つめ、何をどう探求したのか。

こういう視点で書かれた評論は以前にも読んだ記憶がありますが、それは一人の超有名な作家の中でどうだったか、というものばかりで、これほどクロニクルなものは読んだ覚えがありません。

今や日本文学全集などというものが誰も手をつけない図書館の隅にほこりをかぶって眠っているだけの存在でしかないものに成り果ててしまっている現代に、問題定義としてももちろんですが、新刊の中に1940年50年代の小説が入っていて、今の私たちが手にとって読むことが出来るという貴重な企画です。

この巻のラインアップは・・・・・・・

   原民喜・・・・・・壊滅の序曲
   藤枝静男・・・・・イベリット眼
   太田良博・・・・・・黒ダイヤ
   中村真一郎・・・・・雪
   上林暁・・・・・・・禁酒宣言
   中里恒子・・・・・・蝶蝶
   竹之内静雄・・・・・ロッダム号の船長
   三島由紀夫・・・・・親切な機械
                 の8編です。

恥ずかしながら、この中で読んだことがあるのは、18歳〜19歳にかけて全集を読破したことがある三島由紀夫の作品だけで、他の作家は読んだことがあるけれどここに上げられている作品は未読のものばかりです。そして、未知の作家が二人います。太田良博と竹之内静雄です。

こういう企画は、おそらくそれほど売れないということで、いわゆる大出版社では夢想されもしないでしょうが、さすが藤原書店。まだ創業たしか17年ほどの出版社ですが、社会学系の書籍をはじめ数々の重要な書籍を出版していて、貧相な私の本棚にも、石牟礼道子全集やコレクション鶴見和子曼荼羅が鎮座まします。他にもデリダやイリイチの著作でもお世話になっているはずです。

さて、こういう企画を企図した方々はどなたかというと、不親切にも無欲にも何のコメントもありません。ただお三方の名前が並べられているだけですが、たぶんほとんどの人がご存知ないと思われます。幸か不幸か、たまたま私は偶然にも知っていて、その履歴もすぐ思い浮かべることが出来ましたが。

寺田博氏は、今をときめく超有名な編集者で「文藝」や「海燕」でブイブイ作家たちを鍛え上げた伝説の人で、彼のことは、私がかつて溺愛した中上健次絡みで知っていました。
紅野謙介氏は「女子高生のための文章図鑑」(1992)の共著者の一人として知り、そのユニークな活動ぶりに注目してその後いろんな著作や雑誌論文を追っかけ、99年からはHPを愛読させていただいています。
川崎賢子さんは、私が10年程前位からサントリー学芸賞受賞作品を全部読もうと思い立ってから出合った方です。95年に「彼等の昭和」という、あの丹下左膳を生んだ林不忘こと長谷川海太郎をはじめとする長谷川四兄弟を描いて昭和初期のモダニズムの魅力を教えてもらいました。川本三郎や海野弘とはまた違った視点であの頃への思いが深まる気がしました。

今の時代に読まれるべき大切な本なので、あまり欠点を論うのは差し控えたいとは思いますが、このような編集者の紹介と同時に、選ばれた作品の作者についても、もう少し詳細なコメントがあったらいいな、と思いました。

それと、いま巻末の解題を読んでいて気がつきました。知らないし読んだこともないと言った竹之内静雄の「ロッダム号の船長」は、なんと学藝書林の「全集・現代文学の発見」シリーズの別巻「孤独のたたかい」(1969)に収録されていると書かかれています。実物を出してきて確かめてみると、もちろんちゃんとありました。このシリーズは高校三年生の夏休みに読んだのを覚えていますから、確かにこの作品も読んだはずですが、すっかり忘れていました。

たぶん図書館にも入ると思いますので、ぜひ読んでみて下さい。たまにはこういう本も新鮮で刺激的で面白いはずです。

記述日 : 2007年09月16日 00:23:54
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