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戦後占領期短篇小説コレクション 1 1945-46年 (1)
 
 

戦後占領期短篇小説コレクション 1 1945-46年 (1) [単行本]

平林 たい子 , 石川 淳 , 織田 作之助 , 永井 龍男 , 川端 康成 , 井伏 鱒二 , 田村 泰次郎 , 豊島 与志雄 , 坂口 安吾 , 八木 義徳 , 紅野 謙介 , 川崎 賢子 , 寺田 博

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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

【平林たい子「終戦日記」】

 1945年8月15日は晴天でした。私は勤労動員の中学生で、大崎明電舎の屋上に整列して玉音ラジオ放送を聴いた。足許に、正午のみじかい影があった。以後、ずうっと晴天つづきだった気がします。なにしろ、もう空襲がないのだからね。日本全国晴れ、というあんばいではなかったか。
 長野県の諏訪市近郊の農村では、15日はやはり「油絵の如き炎熱」だったと、平林たい子「終戦日記」にあります。
 東京は再三の大空襲で一望の焼け野原。地平線までつづいて、武蔵野とはこうであったか。そこで猫も杓子も疎開さわぎ、とりわけ無用の文学者各位は、帰郷または縁故を頼って全国的に散在しておられた。いうならば未曾有の地方分権時代 戦後の文学活動は、そこからスタートしたのでした。
 敗戦は、だれしも「あっと驚く」ことだったが、平林たい子の驚きは、荷風とも風太郎ともちがう。躍りあがる歓喜なのに「すぐに解放の感覚は起らぬなり。」それほどに緊縛がつよかった。翌16日、わが肌に荒縄の痕をみるくだりが、本篇のサワリでしょう。供出用の草をかついだ痕なんだが、若年よりの検挙、留置、拷問の、屈辱の弾圧史と重なる。その体験が彼女の洞察を深くしている。

【八木義徳「母子鎮魂」】

 八木義徳「母子鎮魂」は、亡き妻と子へ語りかける文体です。やっと復員したら、愛する者らの死が迎えたのでした。
「ぼくには分った。戦争とは、家が焼け、人が死ぬことではなかった。それは、自分の家が焼け、自分の妻や子が死ぬことであった」大発見。本篇の鍵です。
 兵士たちの楽天性について。「彼らの内面生活は放恣であり、悦楽的であり......一日の大半は何となくニヤニヤ笑って」いて、その秘密は「軍服」にある。これは仮りの姿の非現実で「戦争さえも一つの<仮象>にすぎない」戦時強姦も平民虐殺も「軍服」の仕業でニヤニヤやってのけ、やがてそれを脱ぎ捨て「背広と半纏と菜っ葉服と野良着」の「真の生活」へ、ぶじ復員した謹直な人々の大群だったのだ......と、読みとる義理が、こんにちの読者にはあるのではあるまいか。

【それぞれにユニークな面構え】

 ともあれ、敗戦の廃墟から、日本の文学は、このようなスタートを切りました。スタートラインにならんだ諸作は、それぞれにユニークな面構えでありますなぁ。
 六十年をへだてて、このたび通読する機会をえて欣快でした。やや奇異の感をおぼえることもあった。諸作のうち、男女を主題とする作品がおおむね精神と肉体を対立的にとらえ、精神を優位に置いている、ようにみえることです。女体を賛美しながら悪魔であったり、没入するのは堕落だったり、汚れだったり。童貞処女をとうとぶのは、はたして日本の美風か。美しいも、醜いも、精神優位の価値観の裏表。してみると近代教養主義このかたの、むしろ脱亜入欧思想ではありませんか。
 「肉体の悪魔」の張玉芝。「戦争と一人の女」の女。作中の女性たちの言動のほうが、よほどすなおに納得できます。前者は異邦のインテリ行動派、後者は本邦の底辺生活者。女性がもつ自然の叡智は、さまざまな差別もやすやすとこえてゆくかのような。
 いったいこれはどういうことなのか。歴代の男たちの観念過剰に、歴代の女たちは心底あきれながら付きあってくださったのか。
 公平とか控えめとかの徳を欠いて、もっぱら私にひきつけ、私はこう読むと、まっしぐらに語りました。あなたはどうお読みになりますか。おのがじしの読み方の勧めと、お受けとりいただければ幸甚です。(小沢信男−おざわ・のぶお/作家 藤原書店PR誌『機』2007年9月号より)

内容(「BOOK」データベースより)

敗戦から一九五二年にいたるこの未曾有の時期に、文学にたずさわるものたちは何を描き、何を見ていたか。何をとらえ、何をとらえそこねたのだろうか。小説はその時代に生きたひとびとの言葉と緊密な関係を結んでいる。きびしい制約のなかで書かれた短篇小説を通して戦後占領期をあらためて検証し、いまの私たちを問い返すため、ここに「戦後占領期短篇小説コレクション」全七巻をお送りする。

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