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レビュー対象商品: 戦後ギャグマンガ史 (ちくま文庫) (文庫)
「基本的には、ギャグマンガのはじまりを赤塚不二夫あたりにする」。そんな宣誓とは裏腹に、本書における射程はそれよりもはるかに広い。 何せ「漫画」なる語の由来をひもとくにはじまり、戦前の児童漫画の歴史にその手を広げ、 その果てには「『笑い』そのものの考察になり、また一方では『マンガ』そのものの考察」と 壮大な語りを展開するに至る。 基本的な議論の筋立ては、ある面では極めてありふれた現代社会論の一類型と 言ってしまってもいいのかもしれない。 戦後のユーモアマンガが与太郎型、三枚目型のキャラクターを中心として、皆で仲良く 明るい笑いの中で共に暮らす「理想」を反映したものだとするならば、赤塚はそうした 「日常的笑い」に横たわるある種の偽善を告発し、そこに背を向けるようなかたちで、 リアリティをもはや乖離した「意味」の世界、「虚構」の世界の構築を志向する。あるいは また、『パットマンX』のように、「現実」と「夢」とのギャップを笑いへと転化する方法も 広がっていた。やがて、そんな過剰な解体の末、「現実」からあまりに遠ざかってしまった 赤塚を軌道修正するようなかたちで、山上たつひこ『がきデカ』が台頭することになる―― 結局、本書の隠されたテーマとは、マンガの担い手が持つ小宇宙と「現実」との間にある 距離感の歪みの変遷を辿ることであり、単純にギャグマンガの歴史を説くことで言うならば、 やや中途半端との印象は拭えない。少なくとも私にとっては、赤塚に関する考察がもっと 欲しかった、原著の出版は1980年、それこそ本書一冊まるまる赤塚論でもよかったのでは なかろうか、とも思えてしまう。 正直、いわゆるポストモダン系の意味不明、定義不明瞭なボキャブラリーの集積に 理解しきれない記述も見られた。
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