「非実在青少年」の規制問題などで揺れる「エロマンガ」界。
興味を持たない人にとっては、単なるいかがわしい存在なだけかもしれない
「エロマンガ」だが、実は多様で奥深い歴史がある。
これまでほとんど語られることのなかったその軌跡が、マンガ、サブカルに
対して博識で知られる評論家・米沢嘉博によって、雑誌「アックス」に
長期連載されたものを一冊にまとめたもの。
戦後のカストリ雑誌に始まり、貸本、青年劇画誌を経て、90年代の
美少女コミック誌に至るまでの約50年間の「エロマンガ」の通史を、
約2500点にものぼる図版と共に振り返っている。
惜しむらくは、米沢が、本作を連載中に、あと残り数回の連載を残して
急逝してしまったこと。そのため、「未完」で終わっているのだが、
それでも米沢の愛した「エロマンガ」の魅力、そして、米沢が本作を通して
伝えようとしていたメッセージは十分伝わってくる。
まさに、米沢嘉博にしか書き得なかった一つの「文化史」の記録である。
こう書くと、とても堅苦しい内容の本なのではないかと思われがちだが、
具体的な作品を通してわかりやすく書かれており、見ているだけで楽しい
豊富な図版とともに読み応え十分。
近年復刊された米沢の旧著「戦後少女マンガ史」「戦後SFマンガ史」
「戦後ギャグマンガ史」と並んで、マンガの研究書として必読の一冊。