『戦塵外史 五 戦士の法』です。
『男の武骨な斬撃が、追っ手の生命を頭蓋ごと叩き潰す。次々と。なんの躊躇いもなく。男の桁外れの強さに、まだ10歳の少女は息を呑んだ。少女は男を「大男」と呼び、男は少女を「小娘」と呼んだ。お互いの素性も、名前すらも判らない。いや、むしろそれを邪魔になるだけだ。用心棒と、その雇い主。その関係だけがあればいい。男は喋らない。頑強な筋肉で覆われた巨躯が、ただ分厚い足音をシャールの後ろで響かせるばかりだ。この男とならもしや。そう、シャールが考えた時、一目で手練れと判る、細身の双剣使いが彼らの行く手をゆらりと阻んだ…。』
あとがきにあるように、古典文献みたいな体裁で語られています。最初に注意書き、「祖父母へ」なんて献辞までつけて、本文も章末ごとに注釈があります。最後の「後世の著者」による解説までが作品本文となります。
あとがきはあくまでも花田一三六のあとがき。
この史料的形式。とくに斬新という手法ではありませんが、旨く活用しています。
文章が、短文の連続。それどころか単語の羅列になっています。短文による硬質な語り口、というのは戦塵外史作品の特徴ですが、今回はやややり過ぎに感じました。
物語の構成上、メインヒロインである10歳の少女も護衛として雇われた傭兵も、素性も旅の目的も分からないところからスタートです。読者的には冒頭はいきなり意味不明で、物語に入り込みにくかったのですが、メイン登場人物が、少女、傭兵、謎の商人、双剣使いだと飲み込むことができて、少女と傭兵の距離感が変わってくる中盤あたりから面白くなります。
シリーズ既刊読者にとってはニヤニヤできりリンクが、解説でいくつも明らかにされます。
本巻単独の観点でいっても、解説にて語られる後日談がきれいに決まっています。
幼女こそ登場しますが(巻頭カラーで入浴シーンイラストもありますが)、安置な萌えなどに頼らないシリアスな作品も、ラノベには絶対必要です。
そんなわけで、評価は★3.5ですが、消えそうになっても消えて欲しくない作者に期待して切り上げにします。