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669 人中、644人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
ホーゼンフェルト大尉を正しく理解するために,
By
レビュー対象商品: 戦場のピアニスト [DVD] (DVD)
この映画はドイツ語の台詞がひとつのカギとなっています。ドイツ軍は皆、ユダヤ人をdu(貴様、キミ)呼ばわりしています。Duはよほど親しい友人か、見下した相手に対してしか使わない二人称です。横一列に並ばせたユダヤ人たちの中からドイツ兵が恣意的に何人かを一歩前に出させた末に射殺する場面がありますが、この時もドイツ兵の台詞は「Du!=お前(前に出ろ)」という一言です。しかし、隠れていたシュピルマン(ドイツ語ならシュピールマンSchpielman=演奏者、を連想させます)を見つけたナチのホーゼンフェルト大尉は彼をduではなくSie(あなた)で呼びかけます。Sieというのは初対面の人に呼びかける丁寧な二人称で、ドイツ人は親交を深めるうちに、「これからはSieではなくduで呼び合わないか?」と尋ね合った末にようやくduを使うというのが一般的です。 ですからこそ、Sieで呼びかけられてシュピルマンは目の前の将校が他のナチとは違って自分を人間として遇してくれていることに一瞬にして気づくのです。大尉の「ピアノを弾いてくれますか」という比較的丁重な依頼を受けて、おそらく自分は曲を弾き終わったところで殺されることはないだろうというかすかな確信をもってシュピルマンはピアノに向かったはずです。 英語にはドイツ語のようにduとSieという二種類の二人称がなく、すべてyouで表現するため、英訳台本をもとに日本語字幕を作るとドイツ語の台詞が正しく翻訳されません。劇場公開時の字幕では大尉があたかもduで呼びかけているような乱暴な日本語になっていました。DVDとビデオではぜひ改善してほしいものです。さもなければ、シュピルマンを助けた大尉の人物像が正しく伝わらないことになるでしょう。
123 人中、119人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
素晴らしいけれど・・・,
By ココ - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 戦場のピアニスト [DVD] (DVD)
個人的には、「シンドラーのリスト」より好きかもしれません。シュピルマン役のE・ブロディが、シュピルマン本人には似ていないけれど、良いですね。音楽も素晴らしい。ただ、シュピルマンの書いた原作を読んでから観た私には、ホーゼンフェルト大尉との会話の時の字幕と脚本に不満があります。脚本はともかく、字幕に関しては多分、原作を読んだ方は同じように感じていると思います。 シュピルマンの「ドイツ人ですか?」の問いに「そうだ。恥ずかしい事だ。こうなってしまっては!」と答える場面が映画ではなかったのが、凄く残念。その一言で彼の人間性がわかる筈なのに。 また、映画では大尉がシュピルマンに「おい、ユダヤ人。いるか?」と呼びかけるシーンがあったけれど、本では「君、いるか?」と呼びかけています。細かいけれど、印象は随分違ってしまう。あの字幕の翻訳のために、大尉が誤解されそうで、悲しいです。元々は教師で、人道主義者のとても心の優しい人で、助けたユダヤ人もシュピルマンだけではない事も、原作本についている日記等や、シュピルマンのご子息の書かれた本を読むとわかります。 あの字幕は非常に頭にきます。おかげで感動が半減してしまいました。本当に残念です。しかし、それでも、シュピルマンと監督の思いは十分に伝わってくる、見ごたえのある作品であると思います。観る価値は十分にあります。
54 人中、52人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
時代の濁流の中を、木の葉のように漂流する主人公の孤独と奇跡。,
By
レビュー対象商品: 戦場のピアニスト [DVD] (DVD)
物語をドラマチックに見せる演出を排除した、静的な映像が特徴的。主人公シュピルマンと彼の家族に迫る死の影を、暗澹とした気分で、ただ静かに見守ることを義務づけられた作品と言える。シュビルマンの「心の声」や個人的な見解が皆無というのも、この作品を陳腐な政治メッセージから完全に解放している。言葉で表現せずとも、観客(視聴者)は映像から全て理解できるということを監督は知っている。人の声によらず、弦の響きだけでテーマを伝達する「ピアノ」に通じる静的な演出のひとつに違いない。ポーランドが大戦に巻き込まれた背景や、戦争そのものの推移、ワルシャワゲットーの誕生と崩壊など、詳細な説明は一切ない。知っていれば良し、知らなくても良し。観客(視聴者)はスリガラスの向こうの人影の動きを見るように、冷厳な時代の流れを薄ぼんやりと感じながら、映像によってシュピルマンの運命を辿るだけ。おそらく、新聞を読まない、本も読まない、ラジオには出演するが時事放送は聴かないというシュピルマン本人の視点で、彼と同レベルの情報を頼りにドラマを解釈できるように意図されているのだろう。二度にわたるワルシャワ蜂起も、シュビルマンの潜伏する窓から見える、ごく小さな世界の中の出来事として、見事に描いてみせた。彼は「戦争」という時代の流れの中を、木の葉のように漂流するロビンソン・クルーソーなのだ。ロビンソンが絶えず命の危険に怯えながら、孤独と戦い、偶然出逢ったフライデーと心を通わせ、生きながらえることができたように、シュピルマンはドイツ陸軍ホーゼンフェルト大尉に見出され、彼の援助で生き残る。音楽を愛する、良識あるドイツ軍人とのめぐり合いは奇跡以外のなにものでもない。 「戦場のピアニスト」を普通の戦争映画だと思って観ると、失望するだろう。ここには、戦場での激しい戦闘シーンはなく、勇躍する兵士達の姿もない。しかし、この作品の「戦争映画」としての価値はいささかも揺るがない。
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