やはり自国の汚点を根源的に問い詰める映画、などというものは、どこの国でも決して作られたためしはないのだろう。
日本で南京事件、米国でベトナムのソンミ村事件を真っ正面から描く映画が決して作られたことがないのに、ましてやイスラエルのような軍事国家から政府を根源的に批判するような映画が作られるわけはない。甘い期待だった。
本作はイスラエル軍が侵攻中の中東レバノンで1982年、同国首都ベイルート周辺にあったパレスチナ人の難民キャンプで実際に起きた虐殺事件「サブラ・シャティーラ事件」を題材にしている。同国のキリスト教右派ファランヘ党の民兵が、たったの一晩で約2000人もの、それも多くは女性・子供・老人であったパレスチナ難民を虐殺しまくった事件である。背後にはイスラエルの関与があったのは間違いないと言われており、それが証拠にこのアニメ・ドラマでも、イスラエル軍は民兵たちが夜間でも行動がしやすいようにと照明弾を打ち上げ続けていることをしっかり描いている。
まずイスラエルのユダヤ人映画作家がこの題材を真正面から扱った、という勇気は称えたい。しかし、である。
予備知識も何もない人がこの映画を見るとどういうことが起きるか?
「戦争はいやだ」という一般的な反戦論しか導き出せないのではないか?
映画が説明不足というのではない。ラストは実写まで使い、凄惨な虐殺場面を映し出すことまでやっている。
しかし、なぜそこまで凄惨な事件が起き、誰に責任があるのか?という肝心なその追及作業からは、この映画はうまいこと逃げているのだ。
それを描くのはこの映画の本意ではない、というなら、そもそも映画の題材としてこの事件は扱わないでもらいたい。
でなければ、実際には女性は陵辱され、子供はサッカーボールのように蹴り殺しにまでされたという酷い事件の犠牲者たちが浮かばれない。