この本は、1485年に三好長慶の曽祖父である三好之長が京都で徳政一揆の張本人と
して登場してから、長慶の父である三好元長と長慶による覇権成立、そして長慶死
後の三好三人衆と松永久秀の内紛と没落までをカバーする。
そしてメインテーマは以下の三点。
・「堺幕府」のこと
・三好一族の畿内興亡史(畿内の政治的特殊性がよくわかる)
・信長の先駆者として、陪臣としてではなく天下人として幕府より自立した存在となった(実質五年間だけだが)三好長慶について
従来から存在するオーソドックスな戦国大名論ではカバーできない存在として三好
氏をとりあげ、その特異な要素(そしてのちに信長も同様に直面し苦闘する)を描
く。
室町後期から戦国大名→織豊政権→幕藩体制という日本近世史のコースとはまった
く別のルートになりえたかもしれない可能性の一つとして三好政権を取り上げ、そ
れを戦国史における傍流と位置づけることなく、いわば、網野善彦氏にも通じる多
元主義的歴史観(多元的な日本史観、つまり日本の歴史が一様でも一元でもないと
いう)に基づいて書かれた良書といえる。
あと、いつものことだがやはりこの本でも、信長の評価について神経過敏なところ
(つまり過大評価であるとしているわけだが)を見せている。